祖父は自民党の代議士を応援
一方で木村容疑者がのめり込んでいったのが政治の世界だった。容疑者は昨年9月、地元で開かれた市会議員の市政報告会に参加し、来場していた大串正樹・衆院議員に「市議選に出たいが、被選挙権が25歳だから出られないのは憲法違反だ」と訴えたという。前出の元商店主は、当日この会場にいた。
「私が応援していた議員さんの説明会だから片付けも手伝っていたんですが、片付けの間もずっと大串さんにつきまとう若い人がいて、えらい熱心やなと見ていたんですけど、今思うと木村くんだったのかな。マスクしていたから(わからなかった)」
昨年6月には、年齢などを理由に参議院議員選挙に立候補できなかったのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求めて本人訴訟を起こし、11月に棄却されている。
準備書面からは、強い政治不信が窺える、
〈岸田内閣は故安倍晋三の国葬を世論の反対多数(東京新聞9月25日安倍元首相国葬「反対」各世論調査で軒並み増加 9月は全ての媒体で過半数に)の中で議会での審理を経ずに閣議決定のみで強行した。この様な民主主義への挑戦は許されるものではない〉
〈故安倍晋三の様な既存政治家が、政治家であり続けられたのは、旧統一教会の様なカルト団体、組織票を持つ団体と癒着していたからである〉
まるで安倍元首相銃撃事件を起こした山上徹也被告に感化されたかのような物言いが並んでいる。
孫の政治思考など知るよしもなかった和歌山に住む祖父は、戸惑うばかりだ。和歌山は二階俊博・元幹事長を筆頭とする自民党王国として知られており、祖父自身も自民党支持者。岸田首相のことを「応援している」と言う。
「(自民党の)地元の代議士もずっと以前から。誰とか言えませんけど、はじめからその人の(応援を)やらせてもらっています。誰にも恨みつらみはありません」
兵庫県内にある木村容疑者の父方の祖父母宅で、別居中の父親にも話を聞いた。
「一緒に住んでないんやからわかるはずがない。5年も6年も会いもせんような人のことわかる?」
そう言いながら、「子どものことかわいない親なんて、おれへんやん」とつぶやいた。
幼少期から木村容疑者を知る前出の元商店主は、和歌山での犯行について心当たりがあるという。事件が起きた雑賀崎漁港は、“日本のアマルフィ”と呼ばれる観光地だった。
「店番していたウチの家内が奥さんと世間話をしていて、『子どもを連れてどこどこに行った』とよく聞いていました。ご主人は運転が得意ですし。奥さんの実家が和歌山で、『海や川に遊びに行った』という話もしていたから、あの辺(事件現場)には地の利というか、土地勘があったんじゃないかな」
真相は本人にしかわからない。
※週刊ポスト2023年5月5・12日号