ライフ

【新刊】坂本龍一氏がロゴス(論理)とピュシス(自然)について語った対談本『音楽と生命』など4冊

空気の振動を聴けば、それは音楽。楽譜がなくても音楽は成立する(坂本)

空気の振動を聴けば、それは音楽。楽譜がなくても音楽は成立する(坂本)

 新緑が鮮やかになってくるこの季節。暖かくなってきたなかで、ゆっくりと読書を楽しんでみてはいかが? いまおすすめの新刊4冊を紹介します。

『音楽と生命』/坂本龍一、福岡伸一/集英社/2200円
 カバーを外すとしっとりした手触りの本体。対話もしっとりしている。2人の共通テーマはロゴス(論理)とピュシス(自然)。線形(時間の矢にそって進む)ではない音楽を求めるようになった坂本氏と、細胞のすり潰しから動的平衡理論へと生命探究の方法を変えた福岡氏の共振ぶりは深い。NYの坂本邸の中庭には朽ち果てるピアノがあったという。自然に還った坂本氏を悼む。

“植民地”から本土復帰(1972年5月15日)まで。26年闘った亀次郎の快男児ぶりに胸がすく

“植民地”から本土復帰(1972年5月15日)まで。26年闘った亀次郎の快男児ぶりに胸がすく

『南風に乗る』/柳広司/小学館/1980円
 沖縄現代史が主人公のような構成。生き証人になるのは統治者(米軍)の嫌がらせの標的となった政治家瀬長亀次郎、34年間沖縄に帰郷できなかった詩人山之口貘(やまのくちばく)、中野好夫が私費を投じた沖縄資料センターを手伝うミチコ。資料価値の高い歴史のヒダに触れ、これほど怒りの血がたぎった読書も初めて。返還が沖縄の要望無視の強行採決だったとは。現在との酷似に皮膚が粟立つ。

中高一貫校での出張講義を書籍化。講師陣のジェンダーバランスもお美事

中高一貫校での出張講義を書籍化。講師陣のジェンダーバランスもお美事

『高校生と考える21世紀の突破口 桐光学園大学訪問授業』/左右社/1980円
 各講師が戦争、コロナ、ITなどホットな課題を解説しつつ、なぜ自分がこの分野に関わるようになったかを語る。ロシアの軍事侵攻による世界の分断を危惧する廣瀬陽子さん、自分の暗黒期を社会学に救われ移民や入管問題に取り組む高谷幸さん、現地で作る人より商品化する側の取り分が多いことに憤慨してチョコ販売を断った枝元なほみさん。女性達のキャリア話が特に素敵。

枝豆を注文した後に空豆に恋心。「元カノ次カノ」にどう対処する!?

枝豆を注文した後に空豆に恋心。「元カノ次カノ」にどう対処する!?

『パンダの丸かじり』/東海林さだお/文春文庫/770円
 ショージ君は今日も好奇心満々。テレビで知ったキャベツ蕎麦を食さんと椎名町駅に降り立ち、チャーシュー天ぷらの美味に触発され焼鳥天ぷらを提案、舌とアイスの直接邂逅を求めて最中アイスの(半量)剥き食いを発明する。パンダの愛くるしさを言挙げする表題作にちなむと、温和な垂れ目の笹食いのふりして実は肉食という獣性がバレてないのもいいんじゃないでしょうか?

文/温水ゆかり

※女性セブン2023年5月4日号

関連記事

トピックス

熱愛が報じられた新木優子と元Hey!Say!JUMPメンバーの中島裕翔
《20歳年上女優との交際中に…》中島裕翔、新木優子との共演直後に“肉食7連泊愛”の過去 その後に変化していた恋愛観
NEWSポストセブン
記者会見に臨んだ国分太一(時事通信フォト)
《長期間のビジネスホテル生活》国分太一の“孤独な戦い”を支えていた「妻との通話」「コンビニ徒歩30秒」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志と浜田雅功(時事通信フォト)
『ダウンタウンプラス』が絶好調でも浜田が出演しないのは…不仲説も流れた松本がこだわる「地上波復帰」と共演の初舞台の行方
週刊ポスト
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(EPA=時事)
《“勝者と寝る”過激ゲームか》カメラ数台、USBメモリ、ジェルも押収…金髪美女インフルエンサー(26)が“性的コンテンツ制作”で逮捕されなかった背景【バリ島から国外追放】
NEWSポストセブン
「鴨猟」と「鴨場接待」に臨まれた天皇皇后両陛下の長女・愛子さま
(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《ハプニングに「愛子さまも鴨も可愛い」》愛子さま、親しみのあるチェックとダークブラウンのセットアップで各国大使らをもてなす
NEWSポストセブン
SKY-HIが文書で寄せた回答とは(BMSGの公式HPより)
〈SKY-HIこと日高光啓氏の回答全文〉「猛省しております」未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し、自身のバースデーライブ前夜にも24時過ぎに来宅促すメッセージ
週刊ポスト
今年2月に直腸がんが見つかり10ヶ月に及ぶ闘病生活を語ったラモス瑠偉氏
《直腸がんステージ3を初告白》ラモス瑠偉が明かす体重20キロ減の壮絶闘病10カ月 “7時間30分”命懸けの大手術…昨年末に起きていた体の異変
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《独占スクープ》敏腕プロデューサー・SKY-HIが「未成年女性アイドル(17)を深夜に自宅呼び出し」、本人は「軽率で誤解を招く行動」と回答【NHK紅白歌合戦に出場予定の所属グループも】
週刊ポスト
米倉涼子
《米倉涼子の自宅マンション前に異変》大手メディアが集結で一体何が…薬物疑惑報道後に更新が止まったファンクラブは継続中
火事が発生したのは今月15日(右:同社HPより)
《いつかこの子がドレスを着るまで生きたい》サウナ閉じ込め、夫婦は覆いかぶさるように…専門家が指摘する月額39万円サウナの“論外な構造”と推奨する自衛手段【赤坂サウナ2人死亡】
NEWSポストセブン
自らを「頂きおじさん」と名乗っていた小野洋平容疑者(右:時事通信フォト。今回の事件とは無関係)
《“一夫多妻男”が10代女性を『イヌ』と呼び監禁》「バールでドアをこじ開けたような跡が…」”頂きおじさん”小野洋平容疑者の「恐怖の部屋」、約100人を盗撮し5000万円売り上げ
NEWSポストセブン
ヴァージニア・ジュフリー氏と、アンドルー王子(時事通信フォト)
《“泡風呂で笑顔”の写真に「不気味」…》10代の女性らが搾取されたエプスタイン事件の「写真公開」、米メディアはどう報じたか 「犯罪の証拠ではない」と冷静な視点も
NEWSポストセブン