金に糸目はつけないが、勝利に貢献しないなら切り捨てる

 ただ、10倍アップの大型契約を獲得した藤浪の成績は振るわない。グランドスラムを含む1イニング2本塁打という快挙などの活躍を見せる吉田、お化けフォークを武器に勝ち星を重ねる千賀に対し、藤浪は先発を任されながら日本人メジャー選手として初となるデビューから火だるまの4連敗。防御率14.40、自責点24はともにメジャーワーストの成績だ。

 藤浪は4月26日(日本時間)のエンゼルス戦からはリリーフ待機となることが発表されたが、「実はこれもメジャーの高額契約の影響だ」と話すのは日本人代理人のひとりだ。

「メジャーでは出来高として成績に応じてボーナスがつくのが一般的だ。藤浪は先発回数によってボーナスが支払われる契約になっており、先発が『5試合』に達すると球団は10万ドル(約1300万円)を支払わないといけない。勝利に貢献してくれるなら選手間バランスも気にせず、金に糸目をつけないのがメジャー流。でも、勝利に貢献しないとなれば簡単に切り捨てる。藤浪の中継ぎ降格は当然のことで、先発を続けるには4試合目までに勝利に貢献する必要があったんです」

 AP通信によれば藤浪の出来高契約の内容は、先発が5、8、10試合に達すると各10万ドル(約1300万円)、13、18試合なら各15万ドル(約1950万円)、22、25試合だと各20万ドル(約2600万円)が支払われ、先発が25試合になればトータルで100万ドル(約1億3000万円)を手にすることができるという。受賞ボーナスもあり、MVP獲得で10万ドル(約1300万円)、MVP投票2位で7万5000ドル(約975万円)、3位でも5万ドル(約650万円)が支払われ、サイヤング賞でも同様の契約となっている。

 さらにオールスター出場で5万ドル、ワールドシリーズMVPで10万ドル、ゴールドグラブ賞、リーグ優勝決定戦MVPで各5万ドルが支払わるといった具合で、すべての受賞オプションを獲得すると55万ドル(約7150万円)の臨時ボーナスとなる。

 藤浪は先発4試合のうちに結果が出せなかったことで大きなチャンスを逃したが、中継ぎで復活し、先発に戻れば夢の続きを見ることができる。それにしてもメジャーはなぜこんなビッグマネーを支払うことができるのだろうか。大リーグ評論家の福島良一氏はこう解説する。

「日本との最大の収益の差はテレビの放映権料です。全国ネットは全30球団に分配されるほか各チームがローカルのケーブルテレビなどと数十億ドルの放映権料の契約を取り付けています。他にもオンラインビジネスも含めたグッズ販売収益、リーグからの分配金などがあり、スター選手に高額年俸を支払っても採算が取れるのです。もちろん球団によって格差があり、大谷獲得に動くとされるヤンキースなどはニューヨークという大きな市場を持っていることで、メジャーのなかでもさらに豊富な資金力で大物選手を獲得することができるのです」

 それにしても前年に阪神で3勝5敗、防御率3.38の藤浪に4億円も出すメジャーというのは、太っ腹なのか見る目がないのかどちらなのだろうか……。今後の藤浪の成績次第で、どちらなのかが明らかになるのかもしれない。

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