美容雑誌を熟読したり、友人と美容トークを繰り広げたりと、スキンケアの世界を満喫している

美容雑誌を熟読したり、友人と美容トークを繰り広げたりと、スキンケアの世界を満喫している

「羞恥心」との戦い。男は『見る側』にいたことに気づく

 しかし、スキンケアの世界の複雑さ以上に、伊藤さんを戸惑わせたものがある。それは自分自身の中にある「羞恥心」だった。最初は、ドラッグストアのコスメ売り場に3分以上いられなかったという。羞恥心の正体とは何なのか? 伊藤さんは内なる敵と向かい合うことで、羞恥心を克服しようとする。

「たとえばデパートにスキンケア製品を買いに行くと、売る人も買う人もほぼ女性です。そうした状況に身を置くと、私は何者なんだろうと考えざるを得ないんです。「男ワールド」的な場所で生きている人がスキンケアをしようとすると、いったんその場所から出なければいけなくなる。でも、思い切って一度、出てみると、何でこだわっていたんだろうと不思議になるくらい、たいした世界でないことがわかるんです」

 伊藤さんはデパコス(百貨店やデパートのコスメフロアにブースを構える化粧品)を買いに行くと、必ず店員の女性に「プレゼントですか?」と聞かれたという。世の中は変化しつつあるとはいえ、女性の側にも、スキンケア=女性という刷り込みがあるのだ。

 それはやはり、冒頭で述べたように、スキンケアはいま、圧倒的に女性の市場であるからだ。そこに中年男性が分け入ることで見えてくるのは、男性と女性の「当たり前」の違い。そして男女の非対称性だ。

「自分がスキンケアをするようになってわかったのは、多くの男性は『見る側』にいるということです。だから、男は自然が一番で、見た目を気にする必要なんてない、という発想が生まれるんだと思います。自分を棚に上げて、女性の容姿ばかりを品評する男性がいるのも、自分は『見る側』にいると思っているから。男性がスキンケアをすることに否定的な人がいる理由として、『見る側』から、『見られる側』へ行くことへの抵抗や反発があるのではないかという気がします。こっちのチームから抜けるなよ、みたいな」

 スキンケアをすることで、伊藤さんは男性でありながら『見られる側』の目を獲得していく。肌をきれいにするために始めたスキンケアは、伊藤さんの視野を広げ、世の中の見方をも変えていくことになった。

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