人間ドックは家計にも大きな負担
「日本では欧米で20年前に使われていた基準がまだ使われています。悪玉といわれるLDLコレステロールの基準値の上限は、欧米では190mg/dlですが、日本の基準は120mg/dl。この厳しい基準のもと、女性の7割が異常と判断されます」
しかし、欧米に合わせると患者数は約10分の1に減るという。
「そもそも、多くの人は数値が高くても何ら問題はない。LDLが正常範囲を超えると心筋梗塞や脳卒中を起こしやすいといわれていますが、欧米では高コレステロールで心筋梗塞を起こすのは遺伝病の家族性高コレステロール血症の人のうち一部だけというのが常識となっている。しかもコレステロール値を薬で下げすぎると、生理不順やうつ病などの副作用があることも明らかになっています」
そもそもすべてのコレステロールを測定する「総コレステロール」という概念がおかしいと指摘するのは、新潟大学名誉教授の岡田正彦さんだ。
「血液検査ではHDLとLDLを一緒にして、すべてを合算した総コレステロール値も測っていることが多い。善玉と悪玉は個別に測ることに意味があるため、両方を足した数値によって明らかになる病気はありません」(岡田さん)
欧米と比較して日本の正常値が厳しすぎるのは、生活習慣病対策として行われる特定メタボ健診の腹囲とBMIも同様だ。
「現在40〜74才を対象に行われており、“メタボ”と判定された人のうち半分が欧米基準では問題がないとされます。欧米ではウエストを肋骨と腸骨の間で計測する一方、日本ではより数値が高く出る“へそまわり”で計測する独自の基準で測っているからです。女性の場合、骨盤が大きいため、男性よりも数値が高くなる傾向があります。
肥満と判定される基準もかなり厳しく、BMI25〜27.5の人は、『どの年代でも病気になりにくく死亡率が低い』というデータがありますが、日本では、BMI25以上は肥満と判定されています。結果をうのみにしてダイエットを始めれば、かえって健康を損ね、死亡リスクを上げることになりかねません」(大櫛さん)
※女性セブン2023年5月25日号