阪神の快進撃に関西のスポーツ紙も例年以上に熱い盛り上がりを見せている。5大スポーツ紙にはいずれも関西版があるが、最近は読売系のスポーツ報知を除く4紙は勝っても負けても阪神ネタが一面を飾る。なかでも特に力を入れているのが、ご存じデイリースポーツだ。在阪スポーツ紙記者が語る。
「元々“阪神の機関紙“と称されていましたが、今年に入ってから阪神ネタ偏重に拍車がかかっています。市川猿之助の緊急搬送という大事件の翌日も、デイリーだけは『中西太ばり強烈V3打点・ミエちゃん7連勝』とミエセス(27)の活躍を伝えるタイトルを一面トップにしていました」
“機関紙“デイリーは、紙面に「小ネタ」を散らしていることも特徴だ。
「もともと阪神が勝った翌日は一面の『デイリー』というロゴの横棒の部分が虎の尻尾になります(写真参照)が、ほかにも開幕戦に勝利した際は、虎の尻尾に『祝』と書かれた扇のイラストが躍り、村上がプロ初勝利した時は虎の尻尾に背番号41のユニフォームのイラストが添えられるなどバリエーションが豊富です」(同前)
ベテラン記者が“通訳”
さらに各紙が注力する人気コーナーが、その日の岡田彰布監督(65)の発言をまとめた「岡田語録」だ。デイリースポーツの「岡田監督アレトーク」とスポーツニッポンの「新岡田語録『アレ』やコレや」は、タイトルに岡田監督の口癖である「アレ」を採用。さらに日刊スポーツ「岡田監督語録はっきり言うて」とサンケイスポーツ「岡田監督のまぁ聞いてえな」があるが、スポーツ報知だけは“原監督談“の取り扱いのみだ。
「各紙の連載は基本的に岡田監督が囲み取材で喋った内容を再現したものです。監督は『メディアの前で喋ったことはすべて書いていい』というスタンスで記者の質問に直球で応じるので、ファンだけでなく選手も監督の本音が聞けると連載を心待ちにしています」(別の在阪スポーツ紙デスク)
ただし岡田監督には「アレ」のほかにも「はっきり言うて」「そらそうよ」「お~ん」といった独特の口癖を多用するため、記者泣かせの面もあるという。
「ただでさえ聞き取りにくく難解なことに加えて困るのが、主語や述語を省略して話す癖があることです。記者が独自に解釈して談話を補完する必要があるため、同じ囲み取材をまとめた記事なのに各紙のニュアンスが異なることが珍しくない。そのため、すでに最前線を離れているはずのベテラン記者を取材現場に再投入している社もあり、囲み取材での岡田監督の発言を過去の経験をもとに“通訳“させています」(同前)
関西のアレ・フィーバーはまだまだ続きそうだ。
※週刊ポスト2023年6月30日・7月7日号