SDGsには「主婦というライフキャリア」の発想・技術が必要
ひょっとしたら彼女の、知らないことを「知らない」と素直に訴えられる姿勢が功を奏したのかもしれない。話を聞いていて印象的だったのが、雇用に関することだ。現在、株式会社AGRIKOで働くスタッフは8名。1名を除き、主婦が雇用されている。一般的に考えると、時間的な制約の厳しい子育て中の主婦は、雇用問題にぶつかることが多い。そこに、なぜあえて取り組むのか。
「私がキャリアのことを語るのも、おこがましいかもしれませんが……。キャリアには、仕事内容が評価されるワークキャリア、それから家事や育児が見られるライフキャリアのふたつの軸が主ですよね。ワークは評価されることが多いですけど、ライフはなかなか注目されにくい。
でも私がやろうとしていたSDGsに関わる事業は、彼女たちのライフキャリアの発想や技術が必要で、合致したところがパラレルキャリアになる。そう思ったので、そもそも募集の時から、家庭がある主婦の方に絞っていました」
自分の時間を犠牲にして、賃金が支払われることがなくても働く「世の主婦のマルチタスクぶり」を小林は見逃さなかった。加えてAGRIKO FARMでは障がい者雇用の企業支援を積極的に行っている。彼らは行動力も高く、何よりも真面目に働く。その適性を見極めて、仕事を割り振っているという。
人手不足は昨今の日本が抱える大きな問題だ。「人口が減少しているのだから、仕方がない」「若者の働き手は超・貴重」──そういった声は様々な職場で聞こえてくるが、でもそこで踏みとどまらずに、視座を変えて、労働市場の需要と供給をつなげた。
「社内の人事も私が決めました。農園スタッフが5名、営業が1名、CDO(最高デジタル責任者)と、取締役と私。スタッフの多くはお子さんがいるので、AGRIKO FARMで朝から午前中まで働いてもらって、あとは自宅で仕事をしてもらうようにしています。
今はまだ、私自身は報酬をもらっていません。主な収入は女優業で得ています。スタッフだけではなくて、PRや撮影をお願いしている協力スタッフもいるわけですから、やはり責任は重大です」