彼らは精神科医の片田珠美氏がいう「自分が正しい症候群」の人達のようだ。この症候群は、自分の考えが正しいと主張し、自分の価値観が絶対だと疑わず、そこに当てはまらない人を攻撃する。それを相手や周りが受け入れ理解を示せば、ある種の満足感や快感を得られ、繰り返すことになる。会社や学校で面と向かって自分の正義を押し付け攻撃すれば、自分にマイナスになるが、匿名であれば簡単に容赦なく攻撃できる。こういう人を変えることはほぼ不可能だと片田氏はいう。
悪意のある誹謗中傷や、無自覚に悪質な批判をする人々の中には「マイルド・サイコパス」という人々も多いだろう。サイコパスは反社会性パーソナリティ障害という人格障害である。特徴として良心の呵責や罪悪感、共感性の欠如、冷淡でエゴイズム、平然と嘘をつくなどがある。また自己中心的で他者操作性が強く、衝動的で規範などを軽視し、問題行動などもみられるが、マイルド・サイコパスはサイコパスほど反社会的でも犯罪的でもないという。
『サイコパスの真実』(ちくま新書)の著者、心理学者の原田隆之氏は、マイルド・サイコパスについて表面的に魅力があり、感情が薄っぺらく、無責任で平気で嘘をつき、人の気持ちを思いやることができないと述べている。その割合は人口の1%から数%存在し、日本の人口で推測すると、数百万人のサイコパスがいることになる。こうした人々は共感性や罪悪感がないため、対処するのは難しいという。
ryuchellさんは誹謗中傷する人々に「言葉は人を傷つける道具にもなるし、言葉で人を殺すこともできる」と警鐘を鳴らしていたと、7月13日公開のNEWSポストセブン『【ryuchellさん急逝】離婚とカミングアウトで「悪質な誹謗中傷」所属事務所が2月に回答していた対応方針』に書かれている。対処として「アンチに対しては、『諦めること、割り切ること、逃げること、戦わないこと、期待しないこと』と話していた」といい、所属事務所も「法的措置などの予定は今のところありません」という姿勢だったという。彼らが自分が正しい症候群やマイルド・サイコパスなら、それで誹謗中傷を止めることはないだろう。
慌てて投稿を削除するユーザーもいるようだが、一度でも誹謗中傷されて負ったダメージが、それで減じることはない。また、以前よりは訴えやすくなったとはいえ、現実は自分を守るために誹謗中傷された側がスマホやパソコンの電源を切るしかなく、他に攻撃に対して効果的な対処法をもたないのが現状だ。一日も早く無責任な発信で傷つく人が出ないようSNSの世界が変わることを祈る。