小沢氏は細川政権下で選挙制度改革を主導した(左から森喜朗・自民党幹事長、河野洋平・自民党総裁、細川護熙・首相、小沢一郎・新生党代表幹事。肩書きはいずれも当時)
「三度目の正直」を果たす
──しかし、政策の一致がない選挙協力は野合だと批判されます。
「それを言うなら、自民党と公明党だって、えらい違いがあるのに選挙協力している。ドイツの連立政権なんて、右と左のまるっきり政策が違う政党が一緒になってやっている。個別の政策の調整なら役人に任せればいい。それより自民党の今の利権構造を変えることに意味がある。
繰り返しになるが、政権交代の本質は、長年の政権下での既得権を崩すこと。それで、今まで恩恵にあずかれなかったすべての国民に分け与えること。それが一番だ。これを国民によくわかってもらわなきゃならないんです」
──ただ、“政権を取ったらこれを実現するのだ”という政治的な旗印は必要ではないですか?
「それは、2009年のマニフェストに書いた『国民の生活が第一』ということだ。雇用の問題や地方の格差の問題など自民党政権でできた利権構造を破壊する。そしてもういっぺん『生活が第一』の政治に戻す。それが旗印だ」
──政権交代への期待を高めるには誰をリーダーにするかを明確にすることも大事だと思いますが。
「国民が期待する野党共闘の体制ができれば、自ずとリーダーも出てくる。政権交代ができそうだとなると、人材も集まる」
──小沢さんももう81歳です。これが最後の闘いになるかもしれません。気力体力は……。
「まだまだやるよ。もういっぺん、全国を回る。ただ歩くんじゃなくて人間の絆を強めにいくんだ。最後の三度目の正直を果たしてから、ゆっくり諸君とも一杯やりましょう(笑)」
(了。第1回から読む)
【プロフィール】
城本勝(しろもと・まさる)/1957年熊本県生まれ。フリージャーナリスト。一橋大学卒業後、1982年にNHK入局。福岡放送局を経て東京転勤後は、報道局政治部記者として自民党・経世会、民主党などを担当した。2004年から政治担当の解説委員となり、『日曜討論』などの番組に出演。2018年退局後は、日本国際放送代表取締役社長などを経て、2022年6月からフリージャーナリスト。
※週刊ポスト2023年8月4日号