2015年春の選抜に出場した時の県岐商の高橋純平(現・ソフトバンク)。当時と今のユニフォームは大きく異なるが、次なる変更はさらに以前のものに戻すという構想。アンダーシャツは白になるという(時事通信フォト)
アンダーシャツは白に
監督就任から2年が経過した2020年の交流試合(コロナ禍により選手権が中止となり、同じく中止となった同年春の選抜に出場を予定していた32校が1試合ずつを甲子園で戦った)から、ユニフォームの伝統的なデザインを一新。
胸に書かれた「GIFUSHO」の文字を濃紺から鮮やかなブルーに変え、さらに白地だったものを全体に薄い黄色のストライプを入れるという奇抜なものに。帽子のロゴも「G」の一文字から「Ken Gifusho」の筆記体文字に。帽子とアンダーシャツをブルーにして、ストッキングは黄色という、2017年まで鍛治舎監督が率いていた秀岳館(熊本)に似たユニフォームとなった。
100年に迫る歴史のある伝統校ゆえ、当然ながらOBの反発や高校野球ファンの残念がる声も鍛治舎監督には届いていた。それでも断行した理由を、当時、こう語っていた。
「いちいちOBの声を気にしていたら改革なんてできません。私自身、ユニフォームのデザインに強いこだわりがあるわけではありませんが、ユニフォームの刷新が、分かりやすい改革のシンボルになればいい」
ところが、である。来年、再びユニフォームのデザインを変更するというのだ。
「戦前に4回優勝しているんですが、一番強かったその時代のユニフォームを100周年にあわせて復刻します。戦後はアンダーシャツが濃紺となりましたが、戦前は白なんです。2年生にも1年生にも良い選手がいる。なんとか秋の東海地区を勝ち抜いて、まずは選抜に出場したいですね」
この日の準決勝は2試合とも試合時間が長く、2試合目を戦った鍛治舎監督のインタビューが終わる頃には日没が迫っていた。
「本当はこれから帰って練習したいけど、もう17時を過ぎているからさすがに無理だなあ。それよりも練習試合の相手を探さないといかん」
県岐商と同様、京都大会の優勝候補に挙げられていた京都国際は準々決勝で敗退し、愛知の享栄もプロ注目の東松快征を擁しながら準々決勝で愛工大名電に敗れ、甲子園にたどり着けなかった。両校は県岐商と年間何試合も練習試合を組む学校だ。京都国際の小牧憲継監督と享栄の大藤敏行監督に連絡してみてはどうか――。そう提案すると、鍛治舎監督の行動は早かった。
「それは名案だ。おい、部長はどこにおる? すぐに京都国際と享栄に連絡を入れてくれるか」
翌日にはさっそく、県岐商のグラウンドでは京都国際との練習試合が行われたという。こうして県岐商にとって創部100周年の節目となる新チームは始動した。
◆取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)