GPS端末は認知症の人に持ってもらえれば、すぐに位置を検索できるため徘徊対策に非常に有効だという(写真はイメージ)
徘徊対策にGPS端末
認知症の人が徘徊して、駅の構内や線路に立ち入ってしまい、事故にあうという話は、過去の取材でも数回聞いたことがあった。こうした事故は全国で1年間にどれぐらい起きているのだろうか。国土交通省に情報公開請求を行って報告書を入手すると、2005年以降の8年あまりで、少なくとも76人、このうち64人が死亡していることがわかった。
全国の鉄道会社23社にアンケートしたところ、この問題については「社会全体として対応を行っていくべきだ」という意見も複数寄せられ、鉄道会社としても対応に苦慮している様子がうかがえた。国は認知症の人が老人ホームなどの施設でなく、自宅など住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう施策を進めている。しかし、このままでは家族の負担だけが増えかねない。
GPS端末は認知症の人に持ってもらえれば、すぐに位置を検索できるため徘徊対策に非常に有効だ。本人が持ち歩きたがらず置いていってしまうことも少なくないため、有効性に疑問を唱える介護関係者も多い。家族は、首からぶら下げられるよう携帯ストラップをつけたり、お気に入りのバッグに入れたりとあの手この手で工夫をしていた。
認知症の人に持ってもらえれば、所在がわからないという不安は解消されるものの、徘徊をめぐる問題がすべて解消されるわけではない。夜中にGPSを使って居場所を確認しながら捜して回ることはそう簡単ではない。
さらに、徘徊する人を見つけても、すぐに自宅に連れ戻せるわけではない。無理やり自宅に連れて帰ろうとするとかえって機嫌を損ね、さらに長時間歩き続ける結果となるため、何も言わずに付き添いを続けなければならない。徘徊が深夜となれば、睡眠時間はその分削られ、肉体的にも疲労が大きい。これらが繰り返されることで、精神的にも追い詰められる。
それでも、GPS端末は、本人が持ち歩き、かつ家族も使用法が分かるのであれば、一定の費用はかかるものの、有効な対策のひとつになりうると、改めて強調しておきたい。大手セキュリティ会社以外でも、GPS端末のサービスは次々と始まっていて、より小型のものも出始めている。靴に装着するものも開発が進んでいる。課題は費用だが、自治体によっては独自に機器の貸出しや費用の補助を行っているところもある。住んでいる自治体へ問い合わせを。