1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、夏競馬の重賞で唯一のGII「札幌記念」についてお届けする。
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夏競馬の重賞で唯一のGIIが札幌記念です。近年は実績馬が出てくることも多くなり、豪華メンバーが揃うようになりました。GIにしてもいいのではないかという声もあるようで、今年もダービー馬シャフリヤールや大阪杯を勝ったジャックドールなどが出走を予定しているみたいですね。
僕はこのレースを2回勝たせてもらっています。
2001年の3歳馬エアエミネムはデビューが遅くてクラシックには間に合わなかったけれど、ここでダービー馬ジャングルポケットに勝って、次の神戸新聞杯も勝ったようにとても強い馬でした。アイルランド生まれ、関西の伊藤雄二先生の厩舎で、5歳時には函館記念とオールカマーを勝たせてもらっています。
一方、2017年に勝ったサクラアンプルールはここまで順風満帆という馬ではありませんでした。血統的には期待されていたはずですが、デビューして2戦勝てないまま、気性に難があることもあって早々と北海道に転厩となりました。
2連勝して中央に戻ってきましたが、4歳時は6戦しましたが1つも勝てず、中央初勝利をあげたのは5歳の1月。この年はあと2つ勝ってオープン入り、初の重賞挑戦となった6歳の中山記念で2着と典型的な晩成型でした。
僕は札幌記念の前走の函館記念の時に初めて乗せていただきました。この時は9着だったけれど、とてもいい馬で、大外枠でしたが直線でよく追い上げてきた。特に洋芝巧者という印象はありませんでしたが、これを使って変わってきそうな雰囲気がありました。
騎手としての後半は妻から家にいないほうが楽だって言われて(笑)、北海道へ行くことが多くなっていました。そうしたらいい馬の騎乗をいただいたというわけです。翌年から本格的に調教師の勉強を始めるのですが、2017年は函館と札幌でいい成績を出すことができました。
この年は中山記念と香港のGIクイーンエリザベスII世カップを勝ったネオリアリズムという馬が有力視されていましたが直前で出走を回避、たまたまGI馬の出走はありませんでした。勝つためにはそういう「運」も大切な要素です。