ビジネス

半導体世界大手TSMCやコストコが進出する熊本の最低賃金が「898円」で決着した背景とその意味について

半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などが建設を進めているJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社)の半導体製造工場。JASMはTSMCが過半数を出資する子会社(時事通信フォト)

半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などが建設を進めているJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社)の半導体製造工場。JASMはTSMCが過半数を出資する子会社(時事通信フォト)

 2021年に全面改定された三省堂国語辞典に初めて収録されて話題となった「人財」という言葉は、「人材」を財産の「財」に置き換えたもので、近年は企業の人事担当者や経営者が好んでよく使う。この新語に対し、社員は財産だという経営者の思いがこめられているのだという意見がある一方で、うさんくさい、信用できないと感じる人も多い。現代を生きる人たちの生活と労働について記録を続けている日野百草氏が、雇用側、経営者たちが労働者たちを評価する指標のひとつ、最低賃金上げ幅をめぐる攻防について語った。

 * * *
 やっと最低賃金898円(時間額)で決着した。

 熊本県の話である。同県では熊本労働局の審議会で2023年度の最低賃金について審議されてきたが、労働者・経営者委員13人中9人の賛成で決まった。経営者として出席した4人は全員反対にまわった。

 引き上げは45円。過去最大の上げ幅である。

 つまり、熊本県の経営者として出席した4人は1時間あたり45円すら上げたくない、せめて上げるにしても中央最低賃金審議会が示した目安額で収めたかった、ということになる。厚生労働省が審議会で提示した熊本県の最低賃金目安は892円、それを6円上回った。

 当の自治体はもちろん、一部の報道にも「45円増は過去最大の上げ幅」「全国の最低賃金から脱出」とあるが、絶望とまで言わないが暗澹とさせられる。1時間あたり45円すら上げたくなかったのかと。それも反対したのは経営者全員である。ちなみに2022年の審議会でも経営者側の5人全員が反対にまわった。このときの引き上げ額は32円。32円であっても上げたくないものは上げたくない、ということか。

 あくまで熊本県は一例でしかないが、大都市圏を除けば日本のほとんどが熊本県と同様の「過去最大の上げ幅」「過去最高額」という名の「低賃金」にある。先進各国から見るならその大都市すら「低賃金」だ。

この国の賃金は、あまりに安すぎやしないか

 2023年度の日本全国の最低賃金は出揃ったが、最高は東京都の1113円。現状で最低の沖縄県が896円で答申されている。沖縄も過去最高の上げ幅だが、「最高の上げ幅でも896円」である。同じく最低賃金だった高知県は897円で決着、「最低賃金県」から1円でも脱却したかったのかと思うのは穿ち過ぎか。

関連記事

トピックス

タレントでミュージシャンの桑野信義(HPより)
《体重58キロに激減も…》桑野信義が大腸がん乗り越え、スリムな“イケオジ”に変貌 本人が明かしていた現在の生活
NEWSポストセブン
総裁選の”大本命”と呼び声高い小泉進次郎氏(44)
《“坊ちゃん刈り”写真も》小泉進次郎と20年以上の親交、地元・横須賀の理容店店主が語った総裁選出馬への本音「周りのおだてすぎもよくない」「進ちゃんは総理にはまだ若い」
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
《2人の信者が入水自殺》「こいつも死んでました」「やばいな、宇宙の名場面!」占い師・濱田淑恵被告(63)と信者たちが笑いはしゃぐ“衝撃音声”【共謀した女性信者2人の公判】
NEWSポストセブン
雅子さまの定番コーデをチェック(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《“定番コーデ”をチェック》雅子さまと紀子さまのファッションはどこが違うのか? 帽子やジャケット、色選びにみるおふたりの“こだわり”
NEWSポストセブン
ハロウィーンの2024年10月31日、封鎖された東京・歌舞伎町の広場(時事通信フォト)
《閉鎖しても何も解決しない》本家のトー横が縮小する中、全国各地に”ミニトー横”が出現 「追い出しても集まる」が繰り返されている現実 
NEWSポストセブン
「慰霊の旅」で長崎県を訪問された天皇ご一家(2025年9月、長崎県。撮影/JMPA) 
《「慰霊の旅」を締めくくる》天皇皇后両陛下と愛子さま、長崎をご訪問 愛子さまに引き継がれていく、両陛下の平和への思い 
女性セブン
おぎやはぎ・矢作兼と石橋貴明(インスタグラムより)
《7キロくらい痩せた》石橋貴明の“病状”を明かした「おぎやはぎ」矢作兼の意図、後輩芸人が気を揉む恒例「誕生日会」開催
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
「一体何があったんだ…」米倉涼子、相次ぐイベント出演“ドタキャン”に業界関係者が困惑
NEWSポストセブン
エドワード王子夫妻を出迎えられた天皇皇后両陛下(2025年9月19日、写真/AFLO)
《エドワード王子夫妻をお出迎え》皇后雅子さまが「白」で天皇陛下とリンクコーデ 異素材を組み合わせて“メリハリ”を演出
NEWSポストセブン
「LUNA SEA」のドラマー・真矢、妻の元モー娘。・石黒彩(Instagramより)
《大腸がんと脳腫瘍公表》「痩せた…」「顔認証でスマホを開くのも大変みたい」LUNA SEA真矢の実兄が明かした“病状”と元モー娘。妻・石黒彩からの“気丈な言葉”
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ハワイ別荘・泥沼訴訟を深堀り》大谷翔平が真美子さんと娘をめぐって“許せなかった一線”…原告の日本人女性は「(大谷サイドが)不法に妨害した」と主張
NEWSポストセブン
須藤被告(左)と野崎さん(右)
《紀州のドン・ファンの遺言書》元妻が「約6億5000万円ゲット」の可能性…「ゴム手袋をつけて初夜」法廷で主張されていた野崎さんとの“異様な関係性”
NEWSポストセブン