103年ぶりの4強入りを果たした慶応では、地元・神奈川県出身で甲子園のマウンドに上がった投手は0人(時事通信フォト)

103年ぶりの4強入りを果たした慶応では、地元・神奈川県出身で甲子園のマウンドに上がった投手は0人(時事通信フォト)

同じ地方からの越境入学が増えている

 こうなると、古くからの高校野球ファンの中からは「私学優勢で面白くなくなる」という声も出るかもしれない。実際、今大会は史上初めてベスト16が全て私立だった。

「野球留学がピッチャーの肩や肘を守っているという考え方もできます。もし禁止されたら、全国的に実力が伯仲するかもしれませんが、1人のピッチャーに頼る野球が今より増えるのではないでしょうか。球児たちの身体のことを考えれば、それは避けなければならない。それに最近は少子化の影響もあって、教育委員会が入学要件を緩和しており、公立校でも越境入学が可能になっています」

 今年は高知中央(高知)がベンチ入り選手のうち四国出身が4人(高知2、愛媛1、香川1)しかいなかったが、それ以外の高校は県外といっても同じ地方からの入学が目立っている。

「準決勝に残った4校の投手の出身中学は慶応(神奈川)と土浦日大(茨城)は全て関東、神村学園(鹿児島)は全て九州、仙台育英(宮城)は1人を除いて全て東北です。そもそも教育を受ける自由があるわけですし、野球留学は決して悪いことではない。ただ、最近は以前のような、東北の高校の選手が関東や関西出身の生徒で占められるような極端な例は減っていますね」

 越境入学の投手の継投で甲子園を制する──。今後、そのようなチームが主流になってくるのかもしれない。

「逆にいえば、地元出身で固め、1人のピッチャーが完投しまくる高校が出てくれば、間違いなく人気が出るでしょう。最近の例では2018年の金足農業です。公立の農業高校で選手全員が地元出身。ピッチャーの吉田輝星が準決勝まで完投を続けました。ただ、このような例はもはや稀です。吉田輝星はドラフト1位で日本ハムに入団したものの、期待されたような活躍はできていません。今季はまだ一軍登板がありません。甲子園で881球も投げた影響は少なからずあるでしょう。他にも有力なピッチャーが複数いれば負担は軽くなっていたと思いますが、やはり地元出身選手だけでは限界がある」

 かつて批判の的になっていた野球留学が、新しい高校野球の形に寄与し、投手の肩や肘を守っている側面もあるのかもしれない。

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