世界陸上男子100メートル決勝を終えて、健闘をたたえ合うサニブラウン・ハキーム(右)ら(時事通信フォト)
同じように違和感を覚えた人は多かったようで、ネットやメディアには早速「織田裕二ロス」という言葉が飛び交っていた。サニブラウン・ハキーム選手(24才)が男子100mの準決勝で自己ベストタイの9秒97を出し2位で決勝に進出し、決勝では6位に入賞した時には、彼の声が聞こえてきたというコメントまで出ていたほどだ。人には慣れ親しんだ状態を維持したいという欲求がある。それが自分で選択したものでなくても、最初の状態、いわゆる初期値であるデフォルトに影響されやすいという傾向があるものだ。
世界大会でいえばデフォルトは織田さんの司会だ。それに慣れ親しんだ人たちはわざわざ変更してほしい、変更したいとは思わない。そこにはいわゆる「デフォルト効果」という心理的傾向が働いている。また人はデフォルトに固執しやすいといわれる。デフォルトの変更は面倒だし、変えてしまって失敗することもあるからだ。番組サイドにもデフォルト効果はあったはずで、変更するにはかなりのリスクがあっただろう。それでも変更に踏み切ったのにはそれなりの理由があるだろうし、視聴者のこのような声も想定していたと思う。
プロレスが実況アナウンサーで勝負の面白さや盛り上がりがガラリと変わってしまったように、世界陸上も節目を迎えている。織田さんに代わって名物となるメインキャスターや実況アナウンサーが出てくるのを待っていよう。