オリックス監督時代(時事通信フォト)

オリックス監督時代(時事通信フォト)

 翌年以降も2位、3位とAクラスを確保した。ところが2008年に一大事が起こる。

 このシーズン、阪神はFAで広島から獲得した新井貴浩らの活躍で開幕ダッシュに成功する。6月には貯金20に達し、7月9日には2位に13ゲーム差をつけてぶっちぎりの独走状態となった。

 だが、8月の北京五輪に向けて、藤川、新井、矢野耀大の主力3人がチームを離脱したあたりから歯車が狂い始める。

 追い討ちをかけたのが新井の故障だった。腰痛で7月の試合をたびたび休んだ新井は、五輪では一転して全試合に出場する。その姿を心配した岡田氏は、球団トレーナーを北京に帯同させたが、大会終了後に新井の骨折が判明した。

 本誌(2021年7月9日号)のインタビューで岡田氏は当時のことをこう振り返っている。

〈北京で新井が4番ファーストで全試合にフル出場していたから、“帰ってきて出られなくなったらファンに笑われるで。それだけは気をつけてくれよ”とトレーナーには指示していた。それなのに、帰ってきたら腰椎の疲労骨折で戦線離脱や。コーチ会議で思わず“トレーナーはクビや!”と叫んでしまったよ〉

 さらに巨人の猛追を受けた9月、岡田氏は周囲にこう宣言してしまう。

「優勝できんかったら辞める!」

 そして、ついには13ゲーム差をひっくり返されて2位に終わり、岡田氏は宣言通り、阪神を去った。指導者として初めて味わった大きな屈辱だった──。

後編へ続く

※週刊ポスト2023年9月15・22日号

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