1年9か月の日々を日本語学校で過ごし、大阪府立大学へ進んだ
「高専(高等専門学校)を受けたんです。高専へ行って、3年生の時に大学に編入するっていうプランを思い描いていたんですけど、落ちてしまって。それで直接大学入学を目指す方向に切り替えて、予備校の留学生コースに入りました。
いやー、あんなに勉強したのは生まれて初めてでした。ハードでしたね。日本語学校の勉強とはもう、比べ物にならない(笑)。日本語学校は、先生たちも優しかったし雰囲気も温かかったですけど、予備校は完全な競争社会。東大とか早稲田とか、日本のトップの大学の理系学部を目指している人たちばかりで、しかもみんな日本語能力試験のN1を余裕で持ってる。私は当時N2しか持っていなかったので、プレッシャーは半端なかったです」
日本語能力試験、JLPT(Japanese Language Proficiency Test)は日本語の能力を測る試験として一番ポピュラーなものだ。N5からN1まであり、N1は新聞の社説を理解できるくらいの日本語力があるとみなされるレベル。N2も相当に難しい。
「深夜のアルバイトも続けていたし、授業についていくだけでも本当に大変で毎日必死でした。今振り返れば、ものすごくいい経験ではありましたけど。
大学の面接試験も、ユニークというか大学によって全然カラーが違って、これもいい経験でした。たった1分で終わった大学もあったし、ある大学では、ほとんど質問はされなくて、黒板を使いながら出された問題の解き方を解説するように指示されました。いろいろでしたね。
大阪府立大学はすごくざっくばらんな感じで、日本で何がしたいかとか、これまでどんなことで苦労したかとか30分くらいかけていろいろ聞いてくれて、人情味を感じました。相性が良さそうだなとその時思ったので、府大に入れてよかったです。大学院も府大で、来日した時からの目標だった博士号も取ることができました」
(第3回に続く)
【プロフィール】
アイエドゥン・エマヌエル/ベナン共和国生まれ。2012年に大阪府立大学 現代システム科学域 知識情報システム学類に入学。卒業後、大学院人間社会システム科学研究科に進学し「第二言語コミュニケーション意欲を高める会話エージェントの開発」をテーマに研究を進め、博士号取得。現在は関西大学システム理工学部電気電子情報工学科助教。
◆取材・文 北村浩子(きたむら・ひろこ)/日本語教師、ライター。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本紹介番組「books A to Z」では2千冊近くの作品を取り上げた。雑誌に書評や著者インタビューを多数寄稿。