ライフ

ベナン出身エマさんが深夜アルバイトと大学予備校の両立で過ごした「最もハードな日々」【連載「日本語に分け入ったとき」】

ベナン共和国出身のアイエドゥン・エマヌエルさん

ベナン共和国出身のアイエドゥン・エマヌエルさん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。今回は、北村氏が働いていた日本語学校の卒業生で、現在は関西大学システム理工学部で助教を務めるアイエドゥン・エマヌエルさんに、文法や単語を学び始めた頃の話をうかがった。【全3回の第2回】

 * * *

 エマさんが使っていた教科書は、多くの日本語学校で使われている『みんなの日本語』だ。マライ・メントラインさんへのインタビューでもこのテキストについてすこし話をしたが、名詞文(『これはわたしのかばんです』)、形容詞文(『わたしのかばんは小さいです』)、動詞文(『昨日小さいかばんを買いました』)のように順序立てて学ぶことで、前に覚えた言い方を使いながら新しい言葉と表現を増やしていける作りになっている。

 エマさんが言うように『普通にやっていたら、徐々に』できるようにはなる。しかし『自然に』できるかといえば、当然ながらそうではない。

『電気がついています』『電気をつけておきます』という文がこの教科書の中盤あたりに出てくる。『ついて』と『つけて』の違いを、普段わたしたちは気にしない。が、前者は自動詞、後者は他動詞で、この区別はとても大事な文法項目だ。『ドアが開けています』がなぜおかしいのかといえば、自他動詞の使い方が間違っているからなのだが、間違えやすい分だけ教える側は注意深くなる。教わる側も『火を消す?火を消える?どっちだっけ?』のように混乱しがちだ。と思うのだが──。

「ああ、自動詞、他動詞、うん、そう言われてみれば、今もちゃんと使い分けれてるかちょっとあやしいんですけど……(笑)ただ、最初のうちはあまり深く考えずにとにかく覚えようってことだけを考えていた気がするんですよね。授業中、クラスメイトがちょっとふざけて『先生、なんでこんなんなってるのー?』って文法について聞くと『これはルールだから覚えましょう』って先生はいつも答えていて、語学の勉強って基本的に、まるごと覚えることから始まるのかなと。

 その覚え方なんですが、ちゃんとコンテキスト(文脈)の中で覚える。ただ漠然と単語を暗記していくとかじゃなく『シチュエーションの中の表現』として覚えるのが大事かなとは思ってました。日本語うまいなって思う友達の言葉をとりあえず真似てみたりすると、ああ、こういうやりとりの時にこういう表現を使うんだって分かる。当時はそういう風にやっていました」

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン