岩手県知事選で5選した達増拓也氏(中央)。2023年9月3日(時事通信フォト)
「山形にはあるんですよね、早くコストコに来て欲しいですよ」
SNSでも「コストコに来てほしい」という声が簡単に見つかるが、実際にコストコを利用する客としてだけでなく、地域の低賃金を変えて欲しいという労働者としての願望もうかがえる。
コストコの脅威はそこで実際に働く人は限られても、地方の労働者に時給1500円とか、2000円とか出す会社が存在するということを知らしめたことのように思う。彼もまた、そうした願望を語っていた。
筆者はこれまで『全国各地でコストコ「高時給求人」の衝撃広がる 群馬の経営者は「時給1500円は無理」と嘆息』や『コストコ時給1500円「地方からの賃金破壊」が受け入れられていることは明白だ』、『半導体世界大手TSMCやコストコが進出する熊本の最低賃金が「898円」で決着した背景とその意味について』で、この国の最低賃金の格差と1000円すらいかない多くの地域の問題を取り上げてきた。
そうした地域では「時給1500円以上」という岸田首相の表明額どころか「全国で時給1000円」という当初の表明すら達成できないまま現在に至っている。そこで注目されているのがアメリカ発祥の世界的な会員制倉庫型店舗「コストコ」という黒船だった。
「コストコ、盛岡だったらありえるはずだし、そういう話も以前ありました」
コストコの時給は「グローバルスタンダード」を基準にしている。つまり世界の中の日本なので地域に差はつけない。最低時給が800円台の地域でも1500円スタートである。もちろん誰もがコストコで働くわけではないが、コストコが時給の低い地域で1500円を提示するというインパクトは安い時給に慣らされてきた地方にとって十分過ぎるものであった。実際、岩手と同じ東北の宮城に進出したコストコに対して「地域を乱している」とする地元商店会の声もあった。
また「そういう話」とは以前から噂として盛岡にコストコが進出するのでは、という話である。あくまで噂であり実際に出店するのか、しないのかは本旨ではないため言及しないが東北を代表する30万人都市、盛岡への進出はあり得る話だろう。まして岩手の最低賃金はあくまで目安の最低賃金とはいえ2023年10月からでも893円、実際のところ県庁所在地の盛岡すら高くてもスタート時給が1000円前後と考えれば「安くて、よく働く」日本の労働者が来てくれると踏んでもおかしくない。