「ARE」だらけの紙面

「ARE」だらけの日刊スポーツ紙面

 結果的に「優勝」より「アレ」を多く使用したのは日刊とデイリーだけだった。

 阪神贔屓のデイリーは「アレ」について、「胴アレ」(※胴上げの言い換え)と凝った使い方を見せ、名物コラム『松とら屋本舗』では「優勝」を「優○」と書くほど気遣った。それもそのはず、記者コラム『トラ番25時』には興味深い情報が載っていた。

〈監督、選手だけでなく、球団スタッフも、まだ誰もあの言葉を口にしていない。アレの効力は絶大だ。解禁される瞬間が待ち遠しい。〉

 優勝を意識して硬くならないように配慮した岡田監督の「アレ」という表現を、選手たちが1シーズン守り続けているという。たしかに、この日の他紙を読んでも選手の口から「優勝」という言葉は出てきていない。マジック1で迎える14日の先発投手・才木浩人も以下のようにコメントしていた。

〈別にいつも通りです。そんなに気負うアレもないので、勝てるように投げられたらいいかなと〉〈自分が最後まで投げるつもりでマウンドに立ちたい〉(デイリー)

〈別に気負うこともない。チーム内は至って普通です。特別な雰囲気があるわけでもないし、いつも通りやれれば〉(スポニチ)

〈最後まで投げるつもりで。こういう空気感を味わえることはいいことだが、いつも通り〉(報知)

 紙面を読むと、いずれも前日13日の発言のようだ。しかし、日刊スポーツには11日の甲子園での練習時の才木の発言が載っていた。

〈優勝がかかっていたりしたら最後まで投げるつもりでマウンドに立ちたい〉

 才木は「アレ」ではなく、フライングで「優勝」を使っていた。だから、佐藤輝明の満塁弾で勝った13日の巨人戦後、岡田監督は「まあ力み倒すだろうな」と語っていたのか…。甲子園での胴アレが懸かった大舞台で、才木はどんなピッチングを見せるか。

■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。翌年、〈検証『笑点』、リモート大喜利で“好楽のドヤ顔”が消えたワケ〉〈長寿番組『笑点』、“小遊三の下ネタ率”から分かる番組の変化〉(共に2020年8月)で連続受賞を狙うも達成ならず。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)発売中。

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