ビジネス

宇都宮ライトレール開業 沿線の自動車メーカー「ホンダ」が鉄道通勤を推進

芳賀町工業団地管理センター前―かしの森公園前間を走るライトライン。背後にはホンダの事業所が見える(撮影:小川裕夫)

芳賀町工業団地管理センター前―かしの森公園前間を走るライトライン。背後にはホンダの事業所が見える(撮影:小川裕夫)

 交通渋滞と聞くと東京など大都市を中心にした問題と思われがちだが、国土交通省が調査した市街地の混雑している道路のデータをみると、全国でもっとも混雑割合が高かったのは鹿児島市の66%で、東京23区は32位だった。道路の渋滞問題解消は地方都市にとってこそ切実な問題で、先ごろ開業した宇都宮・芳賀町の新型路面電車にも道路渋滞緩和への貢献が期待されている。ライターの小川裕夫氏が、自動車メーカーも含めた沿線企業が通勤に公共交通を推奨する狙いについてレポートする。

 * * *
 2023年8月26日、栃木県宇都宮市と芳賀町に新しい路面電車が開業した。ライトラインの愛称で親しまれる新型路面電車は、宇都宮駅東口―芳賀・高根沢工業団地間を約14.6キロメートルで結んでいる。新しい路面電車の開業は75年ぶりということもあり、鉄道関係者やファンから注目を集めているほか、宇都宮市民や周辺から通勤・通学している人たちの関心も高い。

 同線の沿線には観光地と思しき名所は少ない。また、宇都宮市の繁華街は宇都宮駅の西側、いわゆる東武宇都宮駅周辺なので、このほど開業したライトラインは繁華街を通らない。

 そのため、開業前には利用者がいるのか?といった疑義が呈された。また、宇都宮駅東口には多くのバスが走っており、わざわざ新しい路面電車を建設する必要はあるのか?といった反対の声もあった。事業の採算性を含め、冷ややかな声は少なからずある。

 しかし、宇都宮市は軽々しく新しい路面電車の導入を決めたわけではない。約20年という歳月にわたって熟議し、多くの困難を乗り越えて実現へと漕ぎ着けている。

自動車メーカーが通勤にLRT利用を推奨

 宇都宮市が新しい路面電車の建設推進に動いたのは、終点の停留場名にもなっている芳賀工業団地や高根沢工業団地のほか、清原地区市民センター前を最寄りとする宇都宮清原工業団地、宇都宮大学陽東キャンパスを最寄りとする宇都宮工業団地(平出工業団地)など多くの企業が沿線に事業所を構えていることと無縁ではない。

 そうした企業が集積するライトラインの沿線で、ひときわ目立つのが本田技研工業(ホンダ)の事業所群だ。

 世界でも指折りの自動車メーカーとして知られるホンダは日本各地に事業所を構えているが、それら事業所の規模は大きい。そのため、通勤する人の数も比例して多くなる。宇都宮市と芳賀町では、ホンダをはじめ工業団地の企業が朝の通勤時間帯や夕方の退勤時間帯に宇都宮駅から送迎バスを運行していた。

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン