「政治経済についてコメントするのも大切ですけど、実はスキャンダルネタも嫌いではないんです(笑)」
そうあっけらかんと話すのは、法学博士の山口真由さん。現在は情報番組などにコメンテーターとして出演するほか、信州大学特任教授としての顔をもつ。プロフィールにある東京大学もただ卒業しただけではなく「全優」卒業、司法試験にも在学中に一発合格を果たした。卒業後は財務省に進み、退職後は弁護士事務所でのキャリアを積んだ、“完全無欠”の才女だ。
誰もが彼女と同じ地位を目指すわけではなく、他人事として崇めていればそれでいい、よく日本にもこんな女性が誕生した……と感動していると、そのキャリアには大きな挫折が隠されていた。そのエピソードを綴った『挫折からのキャリア論』(日経BP)が話題を呼んでいる。
ジリジリと崖に追い詰められるような屈辱、ひょっとしたら間違った道を選ぶかもしれなかったほどの挫折。これらの詳細を山口さん自身から話を聞いた。(全3回の最終回。第1回、第2回を読む)
リサーチの成果がコメントで披露できなくても構わない
──現在のお仕事について聞かせてください。『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系列)や、『ゴゴスマ —GO GO!Smile!—』(CBC、TBS系列)などで、コメンテーターとして活躍されています。著書には「リサーチが得意である」と書かれていましたが、どのくらい準備をされているのか教えてください。
山口真由さん(以下、山口):私、小心者すぎるので、事前に準備をしないと不安なんです。もし本番で固有名詞が出て来なかったらどうしよう、と考えてしまう。だからコメントとして発しそうなことは全部書き留める。さらに放送内容の特集が、大谷翔平だったら、彼に関する本を数冊読みます。読みながら「こんな情報や表現もあるのか」と気づく。インプット、アウトプットを繰り返して本番に臨みます。
──そのリサーチぶり、会社員が見習わなくてはいけない姿勢ですね……。ただ、だんだん繰り返していると自分に変化も出てきませんか? もしくはマンネリ化することもあると思います。
山口:あ〜、あります。昔は大量のリサーチをしたのにまったく使われないで帰ってくることがあると、それが許せなかったんです。共演者のコメンテーターの方と司会者との間でやりとりが盛り上がっているときにわざわざ「私も知っています〜」なんて、会話に割って入ろうとすることもあった。今思うと、浅はかだったなと思います。自分がよく見えることよりも、全体で一つの作品を作り上げる方が大事だなって。
──視聴者側としての視点で思うことはないでしょうか。
山口:先ほどの話に戻りますが、準備してきた情報すべてを発表して帰らないと気が済まない、みたいなコメンテーターがいると昔の自分を見ている気がしますね……。当然のことですが、視聴者はコメンテーター同士が繰り広げる、かみ合わない情報合戦なんて求めていません。これは会社の会議だってまったく同じことだと思います。それがリサーチのみ、発言ゼロでも満足できる自分になった要因でしょうか。