一日駅長になるのは、その地元ゆかりの有名人でなければ不可能だと思われてきた。京王多摩センター駅で一日駅長を務めたハローキティ(AFP=時事)
近年、鉄道会社や系列の旅行代理店は鉄道のバックヤードツアーを頻繁に実施し、どれも即日完売している。100万円という高額ではあるが、日本を代表する新宿駅の駅長というプレミアムな体験をしたいと希望する人は少なくないだろう。駅長体験なので1日1名限定という事情は理解できるにしても、2日間のみの実施で計2名は狭き門になることが予想される。100万円が納税控除になる年収は2500万円超と高額で対象者が限定されるだけでなく、それを度外視して申し込みたい新宿駅駅長志望者が少なくないことが容易に想定されるからだ。
もし、実施日数を増やすなどの間口を広げることができれば、さらに多くのふるさと納税が集められる。なによりも、選に漏れて残念な思いをする人も減る。新宿区には、JR東日本のほかにも小田急電鉄が本社を構えている。本社所在地にこだわらず、駅所在地で考えれば西武鉄道・京王電鉄・東京メトロの新宿駅でも駅長体験を実施することが可能で、新宿駅長になれるという返礼品を増やすことができた。新宿駅長にこだわらなければ、新大久保駅や高田馬場駅、四ツ谷駅なども一日駅長の返礼品にすることも可能だった。なぜJR新宿駅に限定したのだろうか?
「新宿区が用意する返礼品は、あくまでも企業からの申し出があったモノ・コトに限定しています。新宿区はJR東日本だけに声をかけているわけではありませんが、今回はJR東日本から協力の申し出があり、そうした協力のもとでJR新宿駅一日駅長体験が返礼品のメニューとして実現しました」(同)
ふるさと納税の返礼品、モノ商品では、東京・大阪といった都市部では人気が高い高級農産物や海産物などの分野で勝ち目はないが、コト商品なら有利になる。JR新宿駅の駅長一日体験が好評なら、ほかの駅の駅長体験もふるさと納税のメニューに加わる可能性がある。
多額の税流出で頭を抱えていた東京23区が、ふるさと納税で巻き返すことはできるのか?