ふるさと納税により都心の自治体は税の流出に悩まされている。東京都世田谷区は広報紙で区民に対して訴えた(時事通信フォト)

ふるさと納税により都心の自治体は税の流出に悩まされている。東京都世田谷区は広報紙で区民に対して訴えた(時事通信フォト)

 約34億円という流出額が一年だけなら、自治体側も何とか予算を工面して凌ぐことも可能だろう。しかし、ふるさと納税の制度が近々に廃止される予定はない。仮に10年後に廃止されるとしても、単純計算で300億円以上の税収を新宿区は失う。

 新宿区は金持ち自治体だから、年間30億円の流出は痛くもないだろう。そんな感想を抱く人は少なくないが、だからといって税の流出を黙って見過ごすわけにはいかない。自治体の予算は、税収の見込み額で計画が立てられている。

 このままでは、ゴミの収集や街の美化・緑化、街灯の設置、公園の整備といった住民サービスを維持できなくなる。

「これまで新宿区はふるさと納税の返礼品合戦に与することはありませんでしたが、10月から返礼品のメニューを増やして、少しでも取り戻すことにしました。とはいえ、新宿区が用意する返礼品はあくまでも地域活性化・地場産業の振興を主眼にしています。一般的に新宿区の地場産業と言ってもイメージしづらいかもしれませんが、新宿区では染色業や印刷業が盛んです。そのため、これらに関連する返礼品を用意することになりました」(同)

 新宿区が用意する返礼品の「モノ」商品に、ふるさと納税返礼品として人気が高い和牛やマグロ、高級フルーツなどの農畜産物や海産物はない。産地ではないので準備できないからだが、「コト」商品は大都市である新宿でなければ実現不可能なものが用意されている。

もっとも利用者が多い駅での一日駅長体験

「コト商品の返礼品には、寄附額200万円で新宿区長の一日体験できるほか、寄附額100万円でJR新宿駅の一日駅長体験できる返礼品を用意しました。新宿駅長体験は1日1名限定で2日間分を用意しています。新宿駅の駅長体験以外にも、寄附額30万円で終電後の新宿駅で駅員の仕事体験や車両見学ができるバックヤード体験、寄附額6万円でみどりの窓口やシミュレーターでの仕事体験プランも用意しました」(新宿区総務部総務課の担当者)

 2022年度におけるJR新宿駅の乗車人員は1日平均60万2000人で、接続する各私鉄などの乗降人数を合わせると359万人。この数字は2018年に、「世界でもっとも混雑している駅」とギネス認定されたほどだ。

 大勢の人が電車を乗降し、改札を抜けて移動する様子は、大都市を象徴する光景としてしばしばニュースや映画、ドラマなどで使用される。その巨大駅の一日駅長となる体験と聞いたら、鉄道ファンでなくとも大いに興味をそそられることだろう。

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