しかしである。そんな状況であれば、いくら金に困ったとはいえ、自身や家族の個人情報、裸の写真や映像までをヤミ金に握られているわけだから、そう簡単に「飛ぶ」はずも無いと思われる。ではなぜ、今なお、こうした掲示板に晒される人が後を絶たないのか。
「今は法律が変わり、存在自体が違法なヤミ金から金を借りても返さなくて良い、ということになりました。すると、司法書士や弁護士に泣きついて、そのまま返さない客が激増したんです。最近は、司法書士などに泣きつく前提で金を借り、そのまま一度も返さない”初回飛び”の客も少なくないそうです。中には、写真や動画がばらまかれようと、何度も何度も融資の申し込みをしてくる客もいる」(U氏)
筆者も以前、関西地方のヤミ金関係者を取材した際、似たような話を聞いたことがあった。免許証や学生証を偽造し、ヤミ金から金を借りようとする高校生や大学生まで存在したが、U氏によればその状況にも拍車がかかっているという。
「結局、ヤミ金を利用しようという客の状態は普通じゃない。しかも、互いに警察に相談できないこともわかっているから、不法行為が次の不法行為を呼ぶような状態になっている」(U氏)
司法書士に相談したら解決するなんて甘い
冒頭、青木さんの妹の例はどうだろうか。筆者が調べたところ、青木さんの妹は何度かヤミ金を利用した後、知人に「ヤミ金には返さなくて良い」と吹き込まれていた。その際、担保としてヤミ金業者に送ってしまった自身の写真や映像がばらまかれる可能性を、どれほど理解していたかわからない。しかし、この先も「被害」が続く可能性をU氏は指摘する。
「飛んだ客の情報は、あらゆる所に共有されます。それこそ通販会社から強盗団の一味にまで、です。新たな脅迫を持って、違法な性風俗店で働いたり新たな借金をしろと強要されるかもしれない。家族の情報まで知られているのに、司法書士に相談したら解決する、なんて甘い考えでいたら危険です」(U氏)
元々は通販業者などから流出した名簿に電話をかけるだけだった「オレオレ詐欺」も、その後は死者まで出した「アポ電強盗」という凶悪な形に変化している。ヤミ金に取られた情報が、今後どのように利用されるかは誰にもわからないのだ。