ライフ

【藤井聡太八冠一強時代】逢坂剛氏×黒川博行氏・愛棋家対談 藤井八冠を倒す鬼才は「AI相手に強くなった“AIの子”になるやろうね」

逢坂剛氏(左)と黒川博行氏はいまの将棋界をどう見る?

逢坂剛氏(左)と黒川博行氏はいまの将棋界をどう見る?

 21歳にして将棋界の8大タイトルを独占──藤井聡太八冠の活躍で、かつてない熱狂が巻き起こっている。研究にAIを活用する“新時代の天才棋士”は、27年前に当時の7大タイトルを制覇した羽生善治九段とどこが似ていて、何が違うのか。そして、強いのはどちらか。文壇きっての愛棋家である逢坂剛氏と黒川博行氏が語り尽くした。【前後編の後編。前編を読む

 * * *
逢坂:さっきAIが藤井くんの強さをさらに磨いたという話が出たけど、私は昔の将棋のほうが魅力的だった気がするな。

黒川:今の棋士は序盤の勉強はみんなAIに頼っていて、昔ながらの矢倉のような戦法はほとんどなくなりました。AIの発達によって戦法も定跡も変わりましたね。

逢坂:AIが考えた定跡はないんじゃないの? 人間が考えるんでしょ。

黒川:そうですね。人間が考えた定跡からAIが新たな手を生み出し、それを人間が真似することで全員に広がる。その分、人間が考える奇手や新手がなくなっている時代やと思います。たとえば、AIのなかった1990年代に藤井猛九段が生み出した「藤井システム」は革新的な戦法で、1年くらいは将棋界を席巻したけど、今は対策が出尽くしている。

 相撲の右四つを得意とする力士なんかと同じで、昔は振り飛車一辺倒など自分が強みとする“型”を持つ棋士がいたけど、AI時代はそれが通用しなくなった。AIの評価値が低い振り飛車は廃れ、みんなが「角換わり腰掛け銀」など同じ戦法を使うようになった。個性を持つ棋士がどんどんいなくなってますね。

逢坂:たしかにそうだね。でも、将棋の魅力は自身の頭をたくさん使って答えを導く「人間力」にあるから、機械頼みになって、みんなが同じようになると面白くないな。

黒川:羽生さんも昔は定跡から離れた奇手がクローズアップされました。彼は発想が普通の棋士と違って、1989年の加藤一二三戦で見せた「伝説の5二銀」などは今も将棋ファンの語り草です。

逢坂:そう考えると「羽生世代」は個性的な棋士が多かったな。羽生さんや佐藤康光さん、郷田真隆さんはみんな強かった。特に羽生さんと同期で、先に永世名人の資格を得た森内俊之さんと羽生さんの対局からは、沸々とたぎるライバル心が見えました。将棋史に残るライバル関係だった。

黒川:羽生さんと森内さんと佐藤さんは若い頃、一つ上の世代の棋士である島朗さんが主宰する「島研」という勉強会で徹底的に将棋を研究しました。名伯楽の島さんのもとで切磋琢磨したことが羽生世代の強さにつながったんやと思います。

逢坂:クロちゃんは羽生世代の一人で天才棋士と謳われた故・村山聖さんの評伝も書いているよね。

黒川“怪童丸”と呼ばれてました。最初にインタビューした時は何を聞いても一言も喋らず、師匠の森信雄さんがすべて代弁していました。彼は幼い頃から将棋が強く、それを周囲に利用されてきたので、大人を信用していなかったのでしょう。

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
マンションの周囲や敷地内にスマホを見ながら立っている女性が増えた(写真提供/イメージマート)
《高級タワマンがパパ活の現場に》元住民が嘆きの告発 周辺や敷地内に露出多めの女性が増え、スマホを片手に…居住者用ラウンジでデート、共用スペースでどんちゃん騒ぎも
NEWSポストセブン
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
デビュー25周年を迎えた後藤真希
デビュー25周年の後藤真希 「なんだか“作ったもの”に感じてしまった」とモー娘。時代の葛藤明かす きゃんちゅー、AKBとのコラボで感じた“意識の変化”も
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
亡くなった辻上里菜さん(写真/里菜さんの母親提供)
《22歳シングルマザー「ゴルフクラブ殴打殺人事件」に新証言》裁判で認められた被告の「女性と別の男の2人の脅されていた」の主張に、当事者である“別の男”が反論 「彼女が殺されたことも知らなかった」と手紙に綴る
NEWSポストセブン
ものづくりの現場がやっぱり好きだと菊川怜は言う
《15年ぶりに映画出演》菊川怜インタビュー 三児の子育てを中心とした生活の中、肉体的にハードでも「これまでのイメージを覆すような役にも挑戦していきたい」と意気込み
週刊ポスト
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン