連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
34年ぶりの大相撲ロンドン公演が行なわれている。海外公演は今回で14回目となり、ロンドン公演は2回目だ。古くから大相撲は「裸の大使」と呼ばれ、海外で大人気を誇ってきた。相撲担当記者が言う。
「会場は1871年開場のロイヤル・アルバート・ホールで、34年前の前回ロンドン公演と同じ場所。5日間にわたって幕内の取組が行なわれて優勝者が決まるが、チケット総数2万7000席分は完売でした。チョンマゲに着物姿ということで力士はどこに行ってもスマホで撮影されていたが、なかでも注目が集まったのは横綱・大の里、そして欧州出身の安青錦です」
前回ロンドン公演があった1991年は、若貴が頭角を現わし、空前の相撲ブームの最中。公演は今回と同じ10月で、5月場所では貴花田(のちの貴乃花)が横綱・千代の富士を破り引退に追い込むなど新旧交代が進んでいた。相撲ジャーナリストが言う。
「史上最年少で出世記録を更新していた貴花田がロンドンでも注目されると期待されたが、結膜炎で休場してしまった。結果、スポーツ紙や相撲雑誌は若花田がひとりで2階建てのロンドンバスに乗っているところを撮影するなど、人気観光スポットでの写真撮影の嵐となった。曙はケンブリッジ大ラグビー部とスクラムを組まされたりしていた。
当時の横綱は旭富士と北勝海、大関は霧島と小錦だったが、知名度が圧倒的に高いのは5月場所で引退した千代の富士だった。それでも相撲が始まると土俵入りを披露する横綱や技巧派の若花田、舞の海らが注目され、曙や小錦といった米国人の巨漢力士にも大きな声援が送られた。ニックネームがついて、北勝海はブルドック、水戸泉はソルトシェーカー、舞の海はマイティマウスとか呼ばれていた」
本来、10月は秋巡業として北陸、関西、中国、四国を回って11月場所の福岡に入るが、この年はロンドン公演で秋巡業がなかった。
「巡業で苦手力士と稽古を積んだりすることで強くなっていくものだが、海外巡業で秋巡業がないと稽古不足になる。そのうえ人気力士は慣れない海外巡業に加え、イベントに引っ張り出されて相当疲労が溜まる」(前出・相撲ジャーナリスト)