二度寝と寝坊で効果を得るにはコツがある(写真/PIXTA)
歴史をひもとくと、芸術家も睡眠をうまく利用していたようだ。法人向けに睡眠改善プログラムを提供するニューロスペースの代表・小林孝徳さんが話す。
「画家のサルバドール・ダリは、発想を得るためにロッキングチェアに寄りかかり、鉄球を指で持った状態で睡眠を取っていたと伝えられています。寝入ると鉄球が金属製のお盆の上に落ち、パチンという音がして覚醒する。そのとき頭に思い浮かんだ光景を絵の題材にするために二度寝、三度寝と繰り返していたという話がある。
藤井さんも、二度寝や寝坊の合間でクリエイティブな発想が浮かぶことがあるのではないでしょうか」
二度寝も寝坊も「上限」を
心身にいい影響があり、創造的な発想も得ることができる──。二度寝と寝坊によってそんな夢のような成果が手に入るならば実践しない理由はない。しかし坪田さんは「やり方次第では逆効果になる可能性がある」と指摘する。
「藤井さんの場合、年齢が若く、また対局によって脳を酷使しているため8時間睡眠では足りていない可能性がある故に、1時間以上の二度寝をするのが体にも脳にもちょうどいいのかもしれませんが、私たち一般人が二度寝する場合、“20分を一度だけ”を心がけましょう。
20分あればコルチゾールが体に行き渡りますし、それ以上になると眠りが深くなり、起きるのがつらくなるうえ、睡眠のリズムや体内時計のバランスが崩れて日中のパフォーマンスをうまく出せなくなってしまう。
また、二度寝の前にはスマホでしっかりアラームをかけておくようにしてください」(坪田さん)
寝坊においても「体内時計のバランスを崩さない」ことは重要なファクターになる。
「休日、朝寝坊する際、平日と同じ時間または、遅くとも1時間以内には一旦起きて、外の光を浴びた後に再度ベッドに入ることを意識してほしい。日の光を浴びることで体が朝を迎えたことを認識するため、ある程度睡眠時間に差が出ても体内時計が大きく狂うことはありません。ただし普段は起きる時刻をできるだけ固定した方が質のいい睡眠につながります」(小林さん)
寝坊においても時間の上限を設けた方がいいと坪田さんは指摘する。
「休日の起床時刻も平日プラス2時間までにすることが大事です。それ以上多く眠ってしまうと月曜日の夜、しっかり睡眠を取ることができなくなり、生活リズムに支障が出ます。
また、二度寝にしても寝坊にしてもスッキリ起き上がり、その後のいいパフォーマンスにつなげるためには前向きな気持ちで取り組むことが何より重要。『惰眠をむさぼってしまった……』と落ち込まずに『気持ちよく眠れてラッキーだった』と思いながら布団を出れば、その日一日精力的に活動できます」
起床時はいくつかのルールが必要である一方、入眠は自由に、自分に合ったタイミングを見つけるのがカギ。
「かつては夜10時〜深夜2時のゴールデンタイムに眠らなければ効果が得られないという説があったが、それは間違い。しっかり深く眠ることができればいつ眠ってもいいのです」(小林さん)
寒くなるにつれ、暖かい布団が恋しくなる。時にはその誘惑に負けるのもアリ、ということのようだ。
※女性セブン2023年11月30日・12月7日号
正しい二度寝と昼寝とは?