限られたお金で先々の支払いを考えやりくりする、という発想がない(イメージ)
彼らは入居審査どころか、物件への申し込みさえできないのだ。「若ければ女の所に転がり込むこともできるだろうが、年とって金のない元ヤクザに転がり込む場所はない。住み込みの仕事にも付けないとなれば、親族や友人を頼るか、誰かに借りてもらうかだ」と話す暴力団幹部は、以前は友人に借りてもらった物件を又貸ししてもらっていたが、今は知人が所有する物件を借りているという。
あればあるだけ使ってしまう業界の感覚
桐生市の男性のケースはなぜ、そのようなことになったのか。市側は「一括支給するとすぐに使ってしまうので、生活指導の意味を込めて求職活動を条件に支給していた」と話しているという。いくら生活指導といっても、さすがにこれはやりすぎだが、同じような話を暴力団幹部に聞いたことがある。
「生活保護費が入ると、酒や博打に使ってしまうやつが多い。家賃や水道高熱費、電話代など諸々を差し引いて、月にいくら使えるのか、毎日いくらで生活すればいいのか。毎日使える金を1000円、2000円と決めてやりくりする。そういう感覚のヤツはヤクザには少ない。見栄を張るのに金を使う、あればあるだけ使ってしまうという業界の感覚が染みついているんだろう」と幹部はいう。
「そんな生活をしてきた元ヤクザは、生活保護を受けても家でゴロゴロするだけだ。時間がたっぷりあるのが楽しいのは最初だけ。そのうちすることがなくて、一人暇を持てあます。散歩に出たってぶらぶらするだけで、途中の自販機やコンビニで酒を買い、飲み始める。やることがないのがストレスになり、酒を飲んで時間をつぶし憂さを晴らすか、博打に行くようになる」(暴力団幹部)
1日1000円しか手元になければ博打は無理だが、まとめて金が入れば気が大きくなる。「刺激が欲しいというのもあるが、これでひと儲けしてやろうとテンションが上がるらしい。ヤクザなら、ギャンブルなんて、最初は儲けても最後には回収される、下手をすれば借金を負わされる。胴元が一番儲かるということがわかっているはずなんだが」と幹部。
いくら組織をやめても長年積み重ねてきた”ヤクザ感覚”はそう簡単には抜けないようだ。