ライフ

アルツハイマー病の抑制に向け、特殊な超音波を照射する「LIPUS」の治験開始

人間が持つ自己再生能力を活用するという考え方に基づいた治療法が登場(イラスト/いかわやすとし)

人間が持つ自己再生能力を活用するという考え方に基づいた治療法が登場(イラスト/いかわやすとし)

 高齢化に伴い、アルツハイマー病が増加中だ。それを受け、治療薬開発が加速している一方、特殊な超音波を照射して血管内皮を刺激し、NO(一酸化窒素)産生を促しながら、アミロイドβやタウタンパク蓄積を抑制する新しい治療法が登場した。脳出血などの合併症や痛みもない低侵襲治療で、認知機能低下抑制が期待され、現在、全国17医療機関にて最終の検証的治験が始まっている。

 WHOによれば、世界の認知症患者は2021年に約3560万人だったが、2030年には2倍の約6570万人に達すると予測されている。高齢化が進む日本も例外ではなく、患者数が増加中だ。

 各製薬会社において治療薬の開発競争も激化しているが、認知症の原因は複数指摘されていることもあり、決定的な治療薬は登場していない。

 そこで、人間が持つ自己再生能力を活用するという考え方に基づいた治療法が登場。それが低出力パルス波超音波(LIPUS)治療だ。この治療法は32波1.875MHz、0.25W/平方センチメートルの特殊な条件の超音波を照射することで血管内皮細胞を刺激し、NOを産生して血管拡張や血管新生を促す。

 LIPUSの研究開発に取り組んだ東北大学名誉教授で、国際医療福祉大学教授の下川宏明教授に話を聞く。

「私は循環器内科専門医ですが、実はアルツハイマー病と心筋梗塞などの動脈硬化性疾患は危険因子や予防法が共通しているんです。ということはアルツハイマー病も始まりは血管病ではないか……と着想し、研究を開始したのです。またアメリカのメイヨークリニックが発表した、アルツハイマー病は脳血管からのNO産生の低下が関係するとの知見もヒントになりました」

 LIPUSの音圧は心エコーや腹部エコー検査で使用する超音波と同程度で、すでに安全性は担保されていた。

 認知症モデルマウスに、このLIPUSを照射した際、脳の血管内皮が刺激されてNO産生が増加し、神経細胞を保護する鞘細胞も増え、血管新生や神経再生を促すという結果が得られた。

関連記事

トピックス

和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
一般家庭の洗濯物を勝手に撮影しSNSにアップする事例が散見されている(画像はイメージです)
干してある下着を勝手に撮影するSNSアカウントに批判殺到…弁護士は「プライバシー権侵害となる可能性」と指摘
NEWSポストセブン
亡くなった米ポルノ女優カイリー・ペイジさん(インスタグラムより)
《米ネトフリ出演女優に薬物死報道》部屋にはフェンタニル、麻薬の器具、複数男性との行為写真…相次ぐ悲報に批判高まる〈地球上で最悪の物質〉〈毎日200人超の米国人が命を落とす〉
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン