ライフ

稲盛和夫氏の『生き方』で日本語を勉強 元技能実習生・タオさん「辞書を引きながら1年かけて読みました」【連載「日本語に分け入ったとき」】

明るい雰囲気で、記者のオンラインインタビューに応じてくれたタオさん

明るい雰囲気で、記者のオンラインでのインタビューに応じてくれたゴー・ティ・トゥー・タオさん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。今回は、ベトナムからの技能実習生として来日し、現在は大学院で学びながら母国の農業に寄与したいと志すゴー・ティ・トゥー・タオさんにうかがった。【全4回の第2回】

 * * *

 農作業は当然ながら早朝の仕事もある。どんなふうにタオさんは勉強していたのだろう。

「実習生のときは、夜は7時、8時に寝て、朝3時頃に起きるという生活だったんですが、私、本を読むことが好きで、読書で勉強しました。日本に来たばかりの頃は、毎週日曜日に美幌図書館へ行って、漢字が少ない、ひらがなの多い本を借りて読みました。ダイソーで小学生用の本を買ったりもしましたね。最初は絵本も読みました。
 
 ベトナムでも本は読んでいたんですけど、重いから持って来なかったんです。日本にもベトナム語の本、あるだろうと思っていたらなかったので、日本語の本を読むしかなかった。それが勉強に結び付きました。
 
 問題集や教科書ばかりやるのは退屈というか、なんか意味がないなって思っていて。本を読むと内容が頭に入って来るから、そこに出てくる言葉も同時に覚えられる。やっぱり読んでいて楽しいほうが覚えられます。言葉だけ勉強しててもあまり集中できないし、すぐ忘れちゃう。でも、本を読むときは内容に入り込んでいるから忘れないんですね」

 うんうんと頷いてしまう。どうしても勉強は「覚えるために覚える」ものになりがちだ(というか、それが勉強というものかもしれないが……)。教える側としては、学習者が興味のありそうな話題を授業中に盛り込むなどして、その日の課題が記憶に残るように工夫するけれど、能動的に取り組める素材を自ら選んで学ぶことほど「強く」覚えられる方法はない。ストーリーを追いながら言葉を頭の中に「入れて」いくと、言葉はきっと「入って」いく。

関連記事

トピックス

代理人・バレロ氏(右)には大谷翔平も信頼を寄せている(時事通信フォト)
大谷翔平が巻き込まれた「豪華ハワイ別荘」訴訟トラブル ビッグビジネスに走る代理人・バレロ氏の“魂胆”と大谷が“絶大なる信頼”を置く理由
週刊ポスト
スキンヘッドで裸芸を得意とした井手らっきょさん
《僕、今は1人です》熊本移住7年の井手らっきょ(65)、長年連れ添った年上妻との離婚を告白「このまま何かあったら…」就寝時に不安になることも
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
《広陵高校、暴力問題で甲子園出場辞退》高校野球でのトラブル報告は「年間1000件以上」でも高野連は“あくまで受け身” 処分に消極的な体質が招いた最悪の結果 
女性セブン
大臣としての資質が問われる(写真/共同通信社)
三原じゅん子・こども政策担当相が暴力団とゴルフ写真の“反社疑惑”にダンマリの理由「官邸は三原氏のことなど構っていられない」
週刊ポスト
お仏壇のはせがわ2代目しあわせ少女の
《おててのシワとシワを合わせて、な~む~》当時5歳の少女本人が明かしたCM出演オーディションを受けた意外な理由、思春期には「“仏壇”というあだ名で冷やかされ…」
NEWSポストセブン
広陵野球部・中井哲之監督
【広陵野球部・被害生徒の父親が告発】「その言葉に耐えられず自主退学を決めました」中井監督から投げかけられた“最もショックな言葉” 高校側は「事実であるとは把握しておりません」と回答
週刊ポスト
薬物で何度も刑務所の中に入った田代まさし氏(68)
《志村けんさんのアドバイスも…》覚醒剤で逮捕5回の田代まさし氏、師匠・志村さんの努力によぎった絶望と「薬に近づいた瞬間」
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《ずっと若いママになりたかった》子ども好きだった中山美穂さん、元社長が明かした「反対押し切り意思貫いた結婚と愛息との別れ」
週刊ポスト
2023年ドラフト1位で広島に入団した常廣羽也斗(時事通信)
《1単位とれずに痛恨の再留年》広島カープ・常廣羽也斗投手、現在も青山学院大学に在学中…球団も事実認める「本人にとっては重要なキャリア」とコメント
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンにウジ虫混入騒動》体重減少、誹謗中傷、害虫対策の徹底…誠実な店主が吐露する営業再開までの苦難の40日間「『頑張ってね』という言葉すら怖く感じた」
NEWSポストセブン
暴力問題で甲子園出場を辞退した広陵高校の中井哲之監督と会見を開いた堀正和校長
【「便器なめろ」の暴言も】広陵「暴力問題」で被害生徒の父が初告白「求めるのは中井監督と堀校長の謝罪、再発防止策」 監督の「対外試合がなくなってもいいんか?」発言を否定しない学校側報告書の存在も 広陵は「そうしたやりとりはなかった」と回答
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「石破おろし」の裏金議員「入閣リスト」入手!ほか
NEWSポストセブン