現在の音楽フェス会場(時事通信フォト)
「BBCは、襲撃後の現場写真を確認し、女性が襲撃者から性的な標的にされていたことを示唆するものだと指摘しています。写真には、下半身がむき出しで下着が裂け、脚が広がった状態の遺体もうつっていたそうです。
またイスラエルが公開した映像からは『ハマスらが切除した胸を道に投げ捨てるなど遊んでいる様子だった』という証言も紹介。ほかにも、被害者の支援団体を通じて生存者からも証言を得ています。
この生存者は現地でさまざまな悲鳴を耳にしたそうです。『負傷しているのにレイプされた女性もいるし、テロリストに襲われているときにはすでに死亡していた女性もいた』ともコメントしていました。ただ、BBCもイスラエルが一方的に公開したという経緯もあり、それら証言を独自で検証しきれているわけではありません」(前出・国際ジャーナリスト)
ハマス側はこうしたイスラエルの公開した残虐行為などについて「否定し、強く非難する」と反発している。
イスラエルに集まる国際的な批判
一方でイスラエル側にも、ガザ地区の民間人を巻き込んだ報復攻撃などについて国際的な批判が集まっている。
「ガザの電気やガスなどのインフラ供給を断ったこと、度重なる空爆などについてアラブ諸国やハマスが国際人道法違反と糾弾していますが、イスラエル側は『自衛権の行使』だと反論しています。国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は、『ハマスとイスラエル、どちらも戦争犯罪をしている』と厳しく非難しています。
イスラエルとハマスの双方が、有利に働くよう意図的なメディア露出をしている可能性もあり、情報が錯綜している状況です」(前出・国際ジャーナリスト)
『メディアと暴力』(勁草書房)などの著書を持ち、メディアリテラシーに詳しい獨協大学外国語学部教授の佐々木輝美氏は、このメディアを通じた情報戦とでも言うべき状況を以下のように分析する。
「そもそもこのような残虐な映像は人間が見てはいけないものであり、多くの人々の心に深い傷を残す可能性があるでしょう。どのような意図があるのかは分からないが、この残虐な映像は結果的に多くのイスラエル人の“先有傾向(人々がもともと持っている特定の態度や行動の傾向)”を強める可能性があります。つまり、ハマスに対する敵対的な態度をますます強めてしまい、報復攻撃を正当化することになるかもしれません。
また、残虐な戦争の映像を繰り返し見ているうちに、意図的に加工された映像世界の状況を現実のものとして受け入れてしまうという培養効果が生じる可能性があります。つまり、『この世界は暴力にあふれているというゆがんだ世界観を持ってしまい、自分ができることは何もない……』とある種の諦めモードに入り、傍観するだけの状態になってしまうことが危惧されます」
“知る必要があるとは思うが、何が正しいかわからない”と悩む人も多いことだろう。情報の受け手はどんなことに注意すべきか。
「衝撃的な映像を伴う特定の情報を鵜呑みにするのではなく、複合的・総合的に情報を吟味すべきです。今回のイスラエルとハマスについてのニュースであれば、発信元となるメディアが双方の立場から報じているか否かを見極めながら、平和への道を考え続けるという目的意識を持ち続けることが必要です」
これ以上の命が落とされてはならない。現地に1日も早い平和を。