スーツ着用という規定をなくした当初はうまくいくかと思われていた(イメージ)

スーツ着用という規定をなくした当初はうまくいくかと思われていた(イメージ)

 結局、世論やマスコミが「先進的だ」「新しい自由な考え方」と持て囃そうとも、その人が不快だと思うことまでは変えられない、ということなのかもしれない。また、人手不足解消にもなるかと思われたこの取り組みであったが、結局その場凌ぎにすらならなかったのだ。

服装自由になったら性格まで変貌

 また、一度「自由」を許してしまえば、中には履き違えた「自由」を謳歌しようとした人々が周囲を巻き込んで、大きな騒動に発展するケースもある。都内の不動産会社勤務・河原茂樹さん(仮名・50代)がうんざりした様子で訴える。

「元々全従業員がスーツ着用でしたが、数年前から私服着用や自由な髪型にすることが許されました。当初は新鮮でいいし、客ウケも相当よかったんですが……」(河原さん)

 不動産業界もまた、客と従業員の信頼関係が重視される職種である。だからこそ、今でも不動産業界で働く男女は共にフォーマルな格好でいることが普通であり、ほとんどの場合、清潔で誠実そうな見た目であることが求められる。しかし、自由を履き違えた河原さんの部下は、経営陣にまで噛み付いた。

「ある部下がハーフパンツにパーマ頭で出社してきて、確かにおしゃれではあるものの、流石にそれはないだろうと注意したんです。ところが、会社の方針では服装は自由だと言って聞かないし、逆に私をパワハラで報告するとまでいうんですよ。真面目で成績も優秀でしたが、服装のせいなのか元からそうだったのかわかりませんが、急に性格が変わったようになり、客に対しても尊大な態度を取るようになってしまいました」(河原さん)

 手に入れた自由を履き違え、それを指摘した河原さんという上司を「論破」したつもりだったのかもしれないこの若い従業員は、結局上司の言うことを聞き入れず、程なくして、接客態度を巡って複数の客からクレームが入るようにまでなった。

「聞けば、髪型を客から指摘されて言い返したそうなんですね。髪型も格好も自由でいいが、自由には責任が伴います。客商売ですから、自由な髪型を受け入れない客だって当然いるわけで、そうした人からの批判も甘んじて受け入れなければ、商売として成立しません。その辺りの感覚を無視しても自由を謳歌したいのなら、辞めてもらうしかなかったですね」(河原さん)

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