同じ介護の仕事も海外でなら日本の倍以上の収入を得られる可能性が(イメージ、AFP Third Party)
共稼ぎだが二人合わせても手取り400万円くらい。彼曰く給料は安い、とのことで、これから急に上がる見込みもない、元々が収入の低い業種だと語る。
「それでも何とかなってたんですけどね、知らない間に使えるお金が減って、今年になったらこれはヤバいなと。言わないだけでそういう中小企業の社員や現場勤務の方々、増えているんじゃないですか」
都内、一人暮らしだが使えるお金が減ったと安いアパートに引っ越した30代男性もこう語る。
「実家を頼れるのは羨ましいですよ。私は東北なので無理です。地元に仕事なんかないし、正社員で手取り13万円とか当たり前の地域ですから。実家住まいで全部小遣いとか、年金の足しになんて人ならいいんでしょうけどね」
彼は高級老人ホームのスタッフとして働いている。それこそ入居一時金が1億円以上の施設だ。筆者もそうした都心の高級老人ホームに知人の何人かが入居されているが、招待されてみればまさに高級ホテルさながらで「老人ホーム」とはまったく思えないような施設だった。金持ちしか用はないとされる有名な大病院もすぐそば、芸人や歌手が毎週営業で訪れる、夢のような老人ホームだ。
そこに入居されている80代の元官僚で数々の理事も経験された方は「もう日本なんかどうでもいいよ」と笑っていた。「逃げ切りだよ、運が良かった」「子どもや孫が裕福ならそれでいい」とも。人にもよるのかもしれないが、私は正直な人だと思った。
「働いてる身からしてもすごいと思いますよ、そういうところに入れる高齢者って。でも私の手取りは夜勤含めても20万円、昇給しても微々たるもので、使えるお金は税金と社会保険料と上がる物価に全部取られるどころか減ってますからね。思い切ったことも含め、いろいろ考えています」(前出の高級老人ホーム勤務30代男性)
普通に働いているのに使えるお金がない、もちろんこれまでもそうした層は存在したが、それが中間層にまで侵食しはじめている。個々人の事情はさまざまだが、中の上であろうと中の中であろうと「使えるお金が減っている」は共通している。
彼の「思い切ったこと」とは海外に出ることだという。もちろん様々な制約があることは彼も知っている。それでもチャレンジとしての活路の選択肢だと話す。
「以前は手取りで20万円超えてればいいかと思ってましたけど、オーストラリアやカナダの介護職って50万円とか80万円とか貰えるらしいので、これから頑張って準備しようと思います。現実は知ってますけど、日本で介護士やっててもずっと安いままですからね、若いうちにチャレンジするのはありだと思ってます。だって50代の施設長すら過大な責任と長時間労働で手取りで400万円とかですよ」