2023年5月の安倍派のパーティー(左から高木毅氏、世耕弘成氏、萩生田光一氏、岡田直樹氏、西村明宏氏、西村康稔氏、松野博一氏。時事通信フォト)

2023年5月の安倍派のパーティー(左から高木毅氏、世耕弘成氏、萩生田光一氏、岡田直樹氏、西村明宏氏、西村康稔氏、松野博一氏。時事通信フォト)

近畿大の職員組合からも辞任要求

 地元関係者の間では、今月1日発行の元公明党県議の渡辺勲氏が主宰する県域の情報誌「和歌山〈21政経フォーラム〉」に掲載された「ほんま、世耕弘成は運のない男やな?」と題した座談会形式の記事が話題になっている。「運がない」とは、衆議院への鞍替えに向けて具体的な動きを見せた2021年10月以来、6度も躓いたという指摘だ。

 AとBという2人の「事情通」はこんなやりとりを交わしている。

〈B「第1の躓きは、2021年10月の衆院選での立候補断念。世耕は二階俊博が出馬せず(筆者注・息子に)後継指名したら二階の選挙区和歌山3区から立候補する構えだった。選挙カーまで秘密裡に用意して出馬の機会をうかがっていたが、二階本人が出ることになって出馬を断念した」
 A「世耕は二階と正面から殴り合いをする覚悟ができていなかった。次の機会が巡ってくるのを待とうとしたことが失敗だった。腰砕けだな。そして一昨年の7月8日、青天の霹靂の如く世耕の後ろ盾だった安倍晋三が狙撃死〔原文ママ〕するという事態が出来。これが世耕の第2の躓き。第3の躓きは、一昨年の県知事選における自民党推薦候補者選び『二階VS世耕代理戦争』での敗北」〉

 代理戦争とは、現在の知事である元国民民主党の衆議院議員、岸本周平氏を推した二階氏に対抗するかたちで世耕氏が総務官僚を擁立しようとした県連内バトルを指すが、ここでも世耕氏は撤退している。

 第4の躓きは2022年10月、安倍派の後継争いで派閥内の参院グループを動かすかたちでトップを目指すもこれまた衆議院側の反発で頓挫。さらに第5の躓きは2023年12月に任意とはいえ特捜部の聴取を受けることになった裏金疑惑と参議院幹事長の辞任だ。

 しかもその影響は深刻で、世耕氏が理事長を務める近畿大学の組合の一つ「近畿大学教職員組合」が12月11日、「本学の社会的評価の低下を招く」などとして理事長辞任を求める要望書を学校法人近畿大学に提出する事態に発展した。これが6番目の躓きだ。

 近畿大学といえば世耕氏の祖父で元自治大臣の弘一氏が創立して以来、一族がトップに君臨してきた家業だ。その足元から吹き出した辞任要求のダメージは計り知れず、情報誌の記事は、〈1998年の初当選以来5期25年、世耕は一度たりとも金にまつわるスキャンダルに見舞われたことがない“キレイな体”だったが、今回の裏金疑惑で世耕が営々と築いてきた信用までも失墜した〉〈衆議院鞍替えは(略)儚く消滅した〉と結んでいる。つまり、首相の目も潰えた、というのだ。

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