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迷惑を最小限に抑える「理想の孤独死」を叶えるにはどうすればいいのか? 「早く見つけてもらう」ために活用すべき官民サービス、アプリなど

黄色の旗を掲げることで安否を確かめ合う「黄色い旗運動」

黄色の旗を掲げることで安否を確かめ合う「黄色い旗運動」

 現在、増加傾向にあるという高齢者の「孤独死」。独居の高齢者が自宅で亡くなり、誰に見つからず長期間放置され、悲惨な状態となってしまうこともある。そういった形で迷惑をかけることなく、最期を迎えるためにできることはあるのだろうか──。【全4回の第3回。第1回から読む】

 独居の高齢者が増える中、誰にも迷惑をかけずにひとり旅立つことは難しい。しかし、迷惑を最小限に抑え、自宅で最期を迎えたいと望む人は多いはずだ。そんな「理想の孤独死」はどうやったら叶えられるのだろうか。

 識者が口を揃えるのは、「早く見つけてもらえる手を打っておく」ことだ。社会保障政策に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博さんは言う。

「早く見つけてもらうためには周囲との関係性を築くことが大事ですが、家族や友人を頼れないなら、官民のサービスを利用するのも手です。たとえば、東京都板橋区が手がける『高齢者緊急通報システム』は、体調が急変するなどの緊急時に通報装置やペンダントのボタンを押せば、コールセンターに通報が入ります。アルソックなど民間警備会社もきめ細かな見回りサービスを提供しています」(結城さん)

 孤独死をテーマにした『死に方がわからない』の著者で、文筆家の門賀美央子さんが活用するのはLINEを用いた見守りサービスだ。

「決められた頻度で送信される生存安否確認に、その都度“OK”と返信するだけの『エンリッチ見守りサービス』で、返信がないとさらなる生存安否確認が行われるので安心できます。ひとりで死んでなかなか見つからないという状況だけは避けたく、毎日頼っています」(門賀さん) 同じくスマホアプリを用いたユニークな見守りサービスが「もし活」。アプリのセーフティーアラートをオンにしておけば、設定した時間(24時間、36時間、48時間)にまったくスマホが動かなければ運営先に通知され、本人と緊急連絡人に安否確認の連絡が入る仕組みで、月額300円からという利用料も魅力的だ。アプリを運営するGoodService社代表の山村秀炯さんが言う。

「始まったばかりのサービスですが、口コミで利用者が増え続けています。家族のニーズというよりは、ひとり暮らしをする高齢者本人の意思で登録するケースが多いです」

 GoodService社は特殊清掃業や遺品整理をメインの業務とする。孤独死の現場に詳しい山村さんが続ける。

「特殊清掃の仕事をして実感するのは、放置された孤独死を迎える人は経済的に恵まれない社会的弱者が多いことです。コミュニティーを持たず、経済的な余裕がなく各種の見守りサービスなどを利用できず孤独死に追い込まれている印象があります。こうした社会的弱者をケアしないと、望まない孤独死をする人は今後ますます増えるはずです」

 格安の「もし活」アプリを開発したのも、低所得者の孤独死を防ぐ一助になればとの一心からで、所得によっては年間500円でサービスを受けられる場合もあるという。特殊清掃業を営む武蔵シンクタンク株式会社代表の塩田卓也さんも、孤独死に追い込まれる人たちに思いを寄せる。

「慢性的に病気がちで引きこもっている人はもともと元気がなく、身の回りの掃除をする気力もなくなりセルフネグレクトに陥り、ゴミ屋敷の中で亡くなってしまうケースが多い。こうした人々は、精神的な疾患を抱えている例もあると見受けられます」(塩田さん)

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