様々な問題を抱える習近平政権(時事通信フォト)
橋爪:この件で習近平体制はぐらつきますか?
峯村:そもそも外相の序列は高くなく、外交儀礼が主な業務であり、実際の外交政策は共産党が担っています。国防相は軍のオペレーションをやるわけではなく、対外的な役割をするもの。2人とも替えはすぐ利く。現にこの2人の後任はいません。それを考えると、習近平にとっては痛くも痒くもなかったんだと思います。
橋爪:日本政府は情報を精確に掴んでいますか。
峯村:日本にはしっかりした対外情報機関がないから対台湾、対中国インテリジェンスを取れていない。材料がなければ戦略も立てようがありません。(文中敬称略)
(後編につづく)
【プロフィール】
橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)/1948年、神奈川県生まれ。大学院大学至善館教授、東京工業大学名誉教授。著書に『おどろきの中国』(講談社現代新書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)、『中国共産党帝国とウイグル』『一神教と戦争』(ともに集英社新書)、『隣りのチャイナ』(夏目書房)など。
峯村健司(みねむら・けんじ)/1974年、長野県生まれ。ジャーナリスト。北海道大学公共政策学研究センター上席研究員。朝日新聞で北京・ワシントン特派員を計9年間務める。近著に習近平国家主席の戦略ブレーン、劉明福・中国国防大学教授が書いた著書を監訳した『中国「軍事強国」への夢』(文春新書)。
※週刊ポスト2024年1月12・19日号