過激なパフォーマンスで「炎上」キャラと知られる、ゆるキャラの「ちぃたん☆」だが、炎上マーケティングは最近ではあまり採られなくなってきた(時事通信フォト)

過激なパフォーマンスで「炎上」キャラと知られる、ゆるキャラの「ちぃたん☆」だが、炎上マーケティングは最近ではあまり採られなくなってきた(時事通信フォト)

 悩むのはこう訴えるテレビ局員にとどまらない。大手広告代理店のテレビ局担当・川村真人さん(仮名・30代)も、次々に芸能人のスキャンダルが発覚し、ほぼ全ての広告クライアントから「(CMの)出演者はクリーンな人を頼む」とか「本当に大丈夫だろうな」と釘を刺されることが増え、疲弊している。

「欧米などで盛んに行われている”キャンセルカルチャー”が、本格的に日本でも始まったのだと思います。どんなに人気者だろうと功績があろうと、たとえば、過去にとんでもないことを行なっていたことが発覚すると、良いことも全部ひっくるめて全てを否定する。確かに、本当に犯罪級のことをやっていれば許されませんが、真偽不明の状態であっても、一度疑惑が出てしまえばダーティーなイメージを払拭するのは相当難しいのです」(川村さん)

 その結果、芸能事務所や所属タレント達は、公私に限らず、常に「クリーンであること」を求められ、奇矯なふるまいや発言で耳目を集めようとすることを厳に慎むよう、指導されているともいう。

「すでに、一部のタレント達は“コンプライアンスが異常に厳しいテレビには出たくない”と言いはじめ、YouTubeやネット番組に力を入れるようになった。ネット広告だとその仕組み上、クライアントにまで責任が及ぶ恐れがないので、テレビや雑誌などに比べて自由度が高い側面もある。出演者達が大手メディアや所属事務所の姿勢にNOを突き付けている格好です」(川村さん)

広告にAIタレントを

 番組を視聴する人すべてに、同じCMや提供が表示されるテレビに対し、「ターゲティング広告」と呼ばれる、ユーザーの視聴履歴や検索履歴などから好みそうな商品を自動的にピックアップした広告が表示されるのが一般的なネット広告の仕組みだ。テレビ広告はクライアントがどの番組やテレビ局に提供しているか明確なので、コンテンツの好感度が高ければスポンサーとして利するところも多いのだが、逆に嫌悪を招くと不買運動を展開されるようなことも起きる可能性がある。その点、各動画との提供関係が不明瞭なターゲティング広告であれば、資金提供者として責任を追求されにくい。万が一、動画の出演タレントによる不祥事が発覚したところで、自動表示される広告を出しているだけなら非難されづらいのだ。

 そうなると、テレビ番組に対して広告を投入するとき、出演者に求めるものが多くなる。とはいえ、どんなにいい人そうであろうと、ドラマなどで正義漢の役を務めようと、それらはあくまで「仕事」として振る舞っている姿であり、仕事以外の顔まではわからない。別の広告代理店関係者は、クライアントからの要望で「探偵を雇ってタレントの素性調査もした」ともいい、相当に神経を尖らせているのだ。

 そんな中で、広告にAIタレントを起用しようという流れが生まれたことは、必然だった。都内の番組制作会社でドラマや広告制作に携わる現役ディレクター・牧野由美子さん(仮名・50代)は、AIタレントの依頼や相談が急増していると説明する。

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