大間さんが撮影した、はる香さんと、優香ちゃん、泰介くん、湊介くんの写真
小学4年生の泰介君にも、意外な一面があった。
「泰介には好きな女の子がいて、ラブレターも渡していたそうなんです。僕が好きな子を聞いても『おらん』って言ってたのに、ちょっと見直しました。泰介、やるやん! って」
妻や子どもたちの思い出を語る圭介さんは、時に笑顔を取り戻すが、ふとした瞬間に突如、嗚咽を漏らす。心が折れそうになりながらも、生きる覚悟を滲ませていた。
「家族のためにやってきたことが、今ではすべて自分だけのためで、道標を失ってしまったように感じます。1日が長いです。でも与えられた命は粗末にできないし、悲しんでも4人は帰ってこない。みんなの誕生日を祝ってあげたりしながら、これからも生きていくしかないんです」
はる香さんの両親が見つかるまでは、職場への復帰を見送る予定だという圭介さん。今宵も遺影に語りかけている。
【プロフィール】
水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年、三重県生まれ。ノンフィンクションライター上智大学外国語学部卒。新聞記者、カメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを中心に活動。英語やタガログ語を操り、現在は拠点を日本に移す。近著に『ルポ 国際ロマンス詐欺』。
※週刊ポスト2024年2月9・16日号