土砂崩れは家族を飲み込んだ
「1日が長いです」
子どもたちに読み聞かせた絵本、おもちゃ、衣類、冷蔵庫の食材……。圭介さん1人では広すぎる自宅には、生前の4人が暮らしていた面影がそこかしこに残っている。
「ご飯を久しぶりに炊いたのですが、炊く量が少ないんですよね。お皿や箸も、こんなに必要ないなって気づくんです」
1人で風呂に浸かっていると、泰介君と湊介君が入ってくるような気がする。外出時には、4人が写った写真立てを持って出かけるようになった。
「告別式のバタバタが終わってから、また新たな寂しさが押し寄せてきました。夜は色々考えてしまうので、普段は飲めないお酒の力を借りて寝ています」
現実を受け入れられず、心の整理がつかない日々。それでもはる香さんが勤めていた会社や優香さんが通った塾、泰介君のスイミングスクールなどには挨拶回りをしている。
「感謝の気持ちを伝えたかったんです。なんの音沙汰もなく辞めるのは気が引けるので」
自宅にお参りに来てくれる学校関係者や友人、知人たちからは、生前の子どもたちの様子を知らされ、驚くことも多い。
長女の優香さんは頑張り屋で、5年生になって管弦楽部に入った。木琴の練習に励み、その痕跡が残されたボロボロの楽譜が学校から戻ってきた。
「僕が知らないところで頑張ってたんやなって。うちの家族のモットーは『やればできる』。優香は運動が苦手やったんですけど、マラソン大会は僕と一緒に一生懸命練習して、去年は学年で5位だったんですよ」