長男・泰介君の誕生日祝い
子どもたちの顔も黒ずんで膨れ上がったり、陥没したりと、生前からは想像もできない姿になっていた。圭介さんは、涙ながらにこう言葉をかけるのが精一杯だった。
「辛かったね」「助けてあげられなくてごめんね」
その場で全員をギュッと抱きしめると、すでに冷たくなっていた。
「でも、5人で会えたねって。やっとみんな帰って来れたねって」
避難所暮らしから久しぶりに自宅へ戻った圭介さんは、葬儀の準備に取りかかった。自宅の整理をしながら、棺の中に入れる物を選んだ。
お気に入りの服やおもちゃの他に、妻にはラブレターもしたためた。13年前に結婚したはる香さんは、一目惚れだった。
「ありがとうっていう気持ち、子どもを産んでくれたことへの感謝の思い。何もしてあげられなくてごめんっていうのと、出会えて良かったって。自宅で泣きながら書いて、妻の胸に置きました」
圭介さんは昨年3月から、珠洲市で単身赴任をしていた。はる香さんは保健師の仕事をしながら子ども3人を育てていたが、最近は精神的、体力的に疲れていたという。
「週末に帰った時は家事を分担していましたが、大変だったと思う。妻は料理が得意で、大根の煮物が美味しかった。今思えば、もっと妻に何かしてあげられなかったかなと。そういう意味での『ごめんね』もあります」