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桐島聡を名乗る男、酒と音楽を愛した50年の逃亡生活で守り抜いた“潜伏マニュアル”、親族は遺体受け取りを拒否

潜伏生活を続けた桐島聡容疑者

酒や音楽も楽しみながら潜伏生活を送った桐島聡容疑者。潜伏マニュアルも活用か(時事通信フォト)

「おれは桐島聡だ」余命いくばくもない末期がんの患者の口を突いて出た言葉の重みを、医師も看護師も当初は理解することができなかった。男が口にした名前が逃亡期間最長の指名手配犯であることに気づくと、病院内は大騒ぎとなった──。

 JR藤沢駅から南に歩みを進めた先、新旧の一戸建てやアパートが混在する住宅街の中で、男はひっそりと生活していた。

 6畳一間の住まいには、かつてはお気に入りのミュージシャンの「ミュージックビデオ」が並べられており、何本ものVHSテープが陳列された空間はまるで昭和の時代にタイムスリップしたかのようだったという。だが、最近は黄色のポリタンクや段ボール箱、コンビニ弁当などの空き容器が床に散乱する“汚部屋”となり、ノスタルジックな雰囲気も消えていた。生活が荒んでいく中、この部屋の主は、約50年前の罪とようやく向き合い始めていたのだろうか。

 1月25日、新左翼組織「東アジア反日武装戦線」のメンバー・桐島聡容疑者(70才)と名乗る男が、神奈川県内の病院で発見され、4日後の29日にこの世を去った。

「国内の過激派らの捜査を担当する警視庁公安部は、大慌てでした。取材対応の予定があった課長は、急に“体調が悪くなった”と取材をドタキャン。この日まで“桐島の、きの字も見えてこない”と話していた公安部としては、自分たちで捕まえられなかった気恥ずかしさがありつつも、色めきだっていた」(警察関係者)

 男が数十年間に及ぶ潜伏生活の舞台としたのは、神奈川県藤沢市内の土木会社だった。

「桐島容疑者とみられる男は内田洋という偽名を使い、約40年前から住み込みで働いていました。身元の証となる健康保険証や運転免許証は所有せず、銀行口座も開設していないようで、給料は現金で受け取っていた。

 創業40年以上のこの土木会社は家族経営で、現在は兄と妹が切り盛りしています。この2人の長兄は市内で別の建設会社を経営しており、地元では有名な建設一族です。会社の従業員や関係者も、住み込みの老人が凶悪なテロ活動に手を染めた指名手配犯とは誰も気づきませんでした」(社会部記者)

 半世紀で大きく変わったのは桐島容疑者とみられる男の容姿だ。重要指名手配犯のポスターやチラシに張り出された桐島容疑者の顔写真は肩まで伸びた髪を七三で分け、黒縁メガネに白い歯。若く快活なイメージだが、現在の容貌は変わり果てていた。

「この男性は、身長160cmほどでガリガリにやせて、体重は40kgそこそこに見えた。80代ではないかと思われるほど老け込み、とても土木会社で働いているようには見えなかったですよ。

 昨年頃から、経営者の妹さんの方が、弱々しく背中を丸め、黒い帽子をかぶったこの男性を車で送迎する様子を目にするようになりました。ちょっと悲しそうな目をしているかたなんですよね」(近隣住民)

 一方で陽気な素顔を見せることもあった。男が数年前まで月に1~2回通っていたバンドの生演奏が楽しめる飲食店では、音楽好きな一面を覗かせたという。

「作業服にジーンズ姿でふらりとやって来ることが多く、常連客から『うっちー』と呼ばれていた。若い頃に聴いていたロックやジェームス・ブラウンの音楽が好きで、バンドが演奏するとノリノリで体を揺らしていました。

 見た目より気が若く、DJイベントやバーベキューにも参加していました。年下の交際相手がいた時期もあったようですが、『女性を幸せにできないから……』と自嘲ぎみに話していたとか。ビールやウイスキーが好きで、酒を飲むと音楽に合わせて踊ることもあったといいます」(前出・社会部記者)

 元気だった男が胃がんと診断されたのは1年以上前。病魔は徐々に体を蝕み、今年初めに土木会社近くの路上に倒れこんだ。

「通りかかった近所の人らが男を抱え、自宅まで連れて行きました。男は息も絶え絶えで体に力が入らず、しゃべることもままならない状態でした。その後、通報によって救急車が駆け付けたそうです」(前出・社会部記者)

 こうして瀕死の男は鎌倉市内の病院に救急搬送されたのだった。

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