号泣する車いす姿の80代女性
杉さんが自前で運んだという支援物資の中には、同世代の被災者が置かれた状況を慮った物がある。車いす座布団や高齢者向け入れ歯洗浄剤などだ。79歳という杉さんだからこそ、避難所で過ごさなければならないお年寄りのニーズがわかるのだと思う。
杉さんが福祉活動や寄付に投じた私財は40億円以上、ボランティア活動については15歳で初めて刑務所を慰問して以来だというから、60年を超えるという。12年前に起きた東日本大震災時も、宮城県や福島県の避難所を訪れ、数千人分の救援物資を届け、5000食以上の炊き出しを行っている。その時に「芸能人の売名」と言われ、「ええ、売名ですよ。皆さんもおやりになるといい」と答えたと先の記事にある。
芸能人や有名人、YouTuberの中には自分が炊き出しに向かうことや現場にいることなどをSNSで公表し、注目を集めようとする者も出てくる。そうでなくても完全なるお忍びでなければ、避難所には彼らを見ようと集まってくるファンで混乱が起きる可能性もある。急に炊き出しにこられて、残飯などの処理に困る避難所もあるだろう。避難所や被災者が本当に欲しているものは何なのか。それがわかるかわからないかが、真のボランティアと偽善者や売名行為との差ではないだろうか。
いくつかのメディアでは、今回の彼のボランティア活動について「”偽善”を絶賛する声が後を絶たない」「これぞ本当の千両役者」と褒め称えている。絶賛や褒め称えられることを杉さんが望んでいるとは思わないが、常に人々の気持ちに深く寄り添う彼だからこそ、高齢の被災者たちも元気づけられるのだろう。