性行為の最中に「ご真言唱えろ!」
B氏は、叡敦さんが結婚していることを知りながら、「(A氏が)この間両親を亡くして独り者なんだ。友達に誰かいい子はいないか」「一度話しにお前が行ってくれ」と話したという。一度会うだけで済ませるつもりだった叡敦さんだが、寺を訪ねた後、A氏が買い物先や母の遺骨を納めた墓地に出没し、つきまとわれるようになった。入手した陳述書を引用する。
〈[編注・2009年]10月10日午後9時半過ぎにA[原典では実名、以下同]から電話がかかってきた時には、私は「近づくな!あなたが怖い!もう私の自宅の近くをうろつかないでください!わたしは、以前被害に遭ったことがあるので男性恐怖症なのです。もう勘弁してください」と強く伝えて電話を切りました。しかし、AやBからの電話は止むことがありませんでした〉(陳述書7ページ)
陳述書によればその約10日後の早朝、叡敦さんの携帯にB氏から「(A氏のところに)行ってやってほしい。誰よりも絶対的に信頼できる人間だから」と電話があった。信仰に篤い叡敦さんにとって阿闍梨の言は重いが、A氏に会うのは恐ろしい。ジレンマに陥っているところにA氏から「掃除している途中に倒れた」という電話。放ってもおけず、悩んだ末に様子を見に行ったところで、A氏は態度を豹変させたとある。
〈Aは私の右手を強く引っ張りベッドに押し倒してきました。(略)私は、怖さのあまり固まってしまい、全く動けませんでした。Aは、性行為の最中、「おん。あろりきゃ。そわか。早く言え!唱えろ!ご真言を唱えろ!」「お前は賢い人間だから唱えられるだろう」と顔を私に擦り付けながら命じました〉(陳述書8ページ)
すべてを引用するのは控えるが、精神的ショックと恐怖感から叡敦さんは抵抗する正常な判断能力を奪われていく。これ以降、A氏は叡敦さんを車で連れ回し、寺や四国各所のラブホテルなどで意に反する性行為を強いられるようになったと詳細に綴られている。叡敦さんが逃げ出さないよう監視し、何時間もの説教、殴るようなそぶり、侮辱の言葉などが重ねられたという。こうした陳述書の内容について、叡敦さんに話を聞いた。
「最初の頃、Aと話せば話すほど、思考の大事な部分が変えられていく感覚を覚えたんです。怖くなってAに、『私をどう変えようとしているの』と聞いたことがあります。その時はまだ、変えられているという感覚を持てていたんです」