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男性ホルモン「テストステロン」を増やすには?イライラ、EDなどの更年期症状に打ち克つ!

テストステロンに良い影響を与える生活習慣や運動とは(写真/PIXTA)

テストステロンに良い影響を与える生活習慣や運動とは(写真/PIXTA)

気力、体力、そして精力。年齢とともに徐々に衰えていくことは自然だが、急に現われた老化現象はテストステロンと呼ばれる「男性ホルモン」の減少が原因かもしれない。しかし、テストステロンは再び増やすことが可能だという。しかも、自らの力で。

監修・取材

・順天堂大学泌尿器科学特任教授 日本メンズヘルス医学会理事 井手久満医師
・演出家・タレント テリー伊藤氏
・川崎医科大学附属病院病院長 泌尿器科医 永井敦医師
・ハーバード・ビジネス・スクール准教授(心理学) エイミー・カディ氏

 

男性と女性で症状や発症年代が異なる「更年期障害」

最近、テレビでヒロミ(58)や長嶋一茂(58)ら男性芸能人が悩みを明かしたことで、なにかと注目を集めている「更年期障害」。

女性特有の症状と思われていた時代もあったが、男性にも更年期障害は起こる。男性の場合、どのような症状が現われるのか。順天堂大学泌尿器科学特任教授で日本メンズヘルス医学会理事の井手久満医師が解説する。

「厄介なのは症状に“これ”という特徴がない点です。初期症状は多岐にわたり、精神症状では不安やイライラ、うつ、不眠、集中力や記憶力の低下、性欲の減退が見られます。身体症状だと筋力低下や筋肉痛、疲労感、急な顔の火照りや発汗、頻尿など。男性特有の症状はED(勃起障害)や朝勃ちの減退があります」

更年期障害は50代など特定の時期に発症するイメージを持つ人が多いだろう。女性はエストロゲンなどの女性ホルモンが急激に減少する閉経前後(50歳前後)のおよそ10年間に起こるとされる。閉経後は徐々に慣れて症状は治まっていくとされるが、男性の場合は少し異なる。

「男性の更年期障害は医学的にはLOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)といい、男性ホルモンの一種である『テストステロン』の減少から引き起こされる病態です。テストステロンは20歳頃をピークに加齢とともに緩やかに減少し、60代で20代の半分に減少します。ただし個人差が大きく、ストレスや肥満、睡眠不足などの生活習慣によって年齢に関係なく低下することがわかっています。注意が必要なのは女性と違って、期間に終わりがないこと。40代以降、何歳になっても起こる可能性があります」(同前)

 

テリー伊藤氏が更年期障害とわかって始めたこと

演出家・タレントのテリー伊藤氏(74)が語る。

「60歳を過ぎた頃から身体に“何か”変化を感じるようになったんです」

テリー氏はこの時期から急に「頭痛」「冷え性」に悩まされるようになり、「夏でも寒さを感じて着込むなど体温調節ができなくなった」という。

「眠りの浅さやトイレが近くなるなど頻尿などにも悩まされていました。何より辛かったのは女性やグラビア写真にときめかず、下半身の元気もなくなったこと。それで何かの病気を疑ったんです」(テリー氏)

知人の勧めもあり、病院を受診して告げられた病名が更年期障害だった。

「僕はお酒は飲まないけど甘い物が好きで、血糖値や血圧も高かったので、今思うと自律神経が乱れたのかなと。先生から『なるべく自分で体を温めるといい』と言われた。週に2~3回はウォーキングで陽の光を浴び、ジムにも行って運動するなど、血液を巡らすように体を動かしています。症状は少しずつですが治まってきました」(同前)

男性ホルモンの減少は何歳になっても切実な問題なのだ。

 

不安があれば「男性ホルモン力」質問票でセルフチェック

泌尿器科医の永井敦氏(川崎医科大学附属病院病院長)は、テストステロンの働きについてこう語る。

「精巣内の細胞から分泌されるテストステロンは、標的となる臓器を刺激することで様々な作用を発現させます。脳や中枢神経では性欲や積極性を高め、筋肉量の増加や骨量維持にも働きます。また勃起や射精、精子の造成にも大きく影響しています。女性も卵巣から分泌されますが、一般に男性の10分の1程度です」

様々な役割を持つだけに、まずは自分の状態を把握しておきたい。前出・井手医師が言う。

「男性ホルモンが減少し、身体の不調を感じても原因がわからず、医療機関を受診する人は少ない。もし不安があれば、質問票でセルフチェックをしてください」

医療機関での診断にも用いられるチェックリストで、精神症状、身体症状、性的症状の17項目についての質問に1点から5点で評価する。

「合計点が27点以上で軽度、37点以上で中程度の更年期障害が疑われ、50点以上なら重症と判断されます」(同前)

「男性ホルモン力チェック」質問票

「男性ホルモン力チェック」質問票

テストステロンの分泌量が減ることで生じるリスクは、時に命に関わる病につながることもある。

「メタボリック症候群や糖尿病、過活動膀胱、骨粗しょう症などのリスクが高まるほか、海外では心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクを高める報告もある。臨床データでは、テストステロン値の低い人は前立腺がんの悪性度が高い傾向があるとわかっています」(同前)

減少を防ぐには、生活習慣の改善が求められる。

「テストステロンの値は日々、身体の状態によって上下動しています。最近は加齢に加えて運動不足やストレスが加わることで急降下するリスクがあることもわかっている。反対に運動による肥満改善やストレスへの対処次第では、再びテストステロンの値を上げることは可能です」(同前)

男性にとって活力の源ともいえる「男性ホルモン」を増やすにはどうすればいいか。

 

男性ホルモンを増やす!ハーバード式「ハイパワーポーズ」とは?

テストステロン低下を食い止めるために自分でできる「簡単な運動」として注目されているのが、米ハーバード大学で考案、書籍化もされ世界的に知られることとなった「ハイパワーポーズ」だ。

ハーバード・ビジネス・スクール准教授のエイミー・カディ氏(心理学)らがテストステロンについて調査(2010年)したところ、体への作用に加えて人の行動にも影響することを突き止めた。

研究では高い地位にあるなど、社会的なパワーのある人ほどテストステロンの基礎レベルが高いことがわかったという。

さらにエイミー氏らは、「パワーに満ちている」と感じている時に人は自然と大きく身体を広げる傾向がある点に着目。

そこから身体を広げることで精神的にも「パワーがあるように感じられるのではないか」と仮説を立てて実験した。

42人の被験者が2分間「ハイパワーポーズ」を取った20分後にテストステロンの値を測定したところ、ポーズ前に比べて19%上昇することが認められたという。

ハイパワーポーズはいくつかあるが、有名なのはアメコミヒーローの「スーパーマン」を彷彿とさせる、背筋を伸ばして腰に手を当て、胸を大きく張る姿勢だ。

「胸を張って肩甲骨を後ろに突き出すように寄せた身体を開く姿勢によってテストステロンが上がったという論文があり、それをエイミー氏がハイパワーポーズと呼んでいます。社会性のホルモンですから、自信に満ちた力強い姿勢がテストステロンの増加と関係している可能性はあります」(井手医師)

ハーバード式「ハイパワーポーズ」

ハーバード式「ハイパワーポーズ」(イラスト/タナカデザイン)

テストステロンを減らす姿勢や食事に注意

一方、座って猫背でうつむく、身体を閉じる姿勢などはテストステロンの減少につながる恐れのある「ローパワーポーズ」だと指摘された。

エイミー氏は著書でハイパワーポーズを意識した姿勢を日常に取り入れることを推奨している。

「ハイパワーポーズを1日数回、2分程度でいいので日光を浴びながら行なうのがいいでしょう。日本人をベースにした研究でも、運動とダイエットが血液中のテストステロンのレベルを有意に改善すると示されています。1日30分程度のウォーキングの最中にハイパワーポーズをするのが効果的かもしれません」(同前)

「ローパワーポーズ」

「ローパワーポーズ」

またテストステロンを高める生活習慣は、運動だけではない。前出・永井医師が解説する。

「無理な運動や激しい運動はかえって低下させることもあるので禁物です。生活のなかで階段を使うことを意識するだけでもいいでしょう。食事に関しては、オリーブオイルなど不飽和脂肪酸や青魚のオメガ3系脂肪酸がテストステロンを上昇させると期待されます。亜鉛やセレンなどミネラル分、ビタミンDの摂取不足は低下につながることもあるので注意が必要です」

心身の健康は「自信」を持つことから始まる。

※週刊ポスト2024年2月23日号

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