天塩町の航空写真(時事通信)
「リピート率は8割」
天塩町でライドシェアの取り組みを担当する企画商工課の菅原英人さんは、仕組みについて次のように語る。
「サービスに登録済みのドライバーが稚内市までのドライブ予定をアップし、それに同乗希望者が相乗り希望を申請する、という仕組みです。相乗りのマッチングは、役場での電話取り次ぎが可能であり、高齢者の方でも利用しやすい。同乗利用者はドライバーに割り勘でガソリン代の実費分のみを支払うため、運送に対する対価は発生しません。つまり有償ではないので“白タク”行為には該当しないんです」(菅原さん、以下同)
天塩町から稚内市までのガソリン代は片道約1000円ほど。稚内市までバス・鉄道で移動する際、最低でも2000円近くかかり、その上1時間以上も待機時間があることからライドシェアのほうが利用者負担は少ない。利用する際の目的地は天塩町から稚内市まで限定されるため、タクシーとの競合も起きにくいのだ(※天塩町から稚内市まのタクシー料金は片道約2万5000円程度) 。
だが前例がない仕組みであったため、導入初期は高齢者から全く認知されなかったという。
「交通弱者である高齢者は、スマホやパソコンを利用できない情報弱者でもあります。なので、天塩町ではこの取り組みを知ってもらうため、説明会や体験ツアーを実施しました。当初は『知らない人の運転だと不安』という声が多かったのですが、次第に『助かる! ありがたい!』と主張する声が大きくなりました。利用者のうち8割は高齢者であり、リピート率も8割を超えています」
現在、利用者は月平均10~20人で推移しているという。2019年からは相乗り保険の運用も開始しており、ドライバーや同乗利用者を補償する対策も行われている。