ライフ

【新刊】超常的な出来事をリアルに落とし込むワザが真骨頂、佐藤正午『冬に子供が生まれる』など4冊

直木賞受賞から7年を経ての新作。記憶の揺らぎを書く筆がますます冴える

直木賞受賞から7年を経ての新作。記憶の揺らぎを書く筆がますます冴える

 3月も中旬に入り、もうすぐ桜の季節がやってくる。ぽかぽかしたムードのなかで読書を楽しめば、人生もさらに豊かになるはず。春を前におすすめの新刊を紹介する。

『冬に子供が生まれる』/佐藤正午/小学館/1980円
 佐渡君が付けたあだ名「マルユウ」(丸田優)と「マルセイ」(丸田誠一郎)。彼らは8歳でUFOを見た子供達として有名になり、10年後同現場で事故に遭う。交流も途絶えたその20年後、マルユウは「今年の冬、彼女はおまえの子供を産む」という予言メッセージを受け取る。超常的な出来事をリアルに落とし込むワザが著者の真骨頂。周囲に理解されない純愛小説としても胸がざわつく。

大好評につきシリーズ化。今回も予測不能なあかりの行動が爽快

大好評につきシリーズ化。今回も予測不能なあかりの行動が爽快

『成瀬は信じた道をいく』/宮島未奈/新潮社/1760円
 幼馴染みの島崎とお笑いコンビ「ゼゼカラ」(膳所から世界への略)を組む成瀬あかり史第2弾。ゼゼカラに憧れる小学生、正しさ好き(クレーマーとも言う)の若い主婦、あかりと共に観光大使になる美女など、平板な地方都市に色が付くのがこのシリーズの美点。島崎は東京の私大へ、あかりは京大へ。成瀬あかりのジェンダーレスな喋り方にご注目を。これ、一種の発明なのでは?

女子教育上よろしくないと、明治期には恋歌をばっさり削除した異種百人一首も!?

女子教育上よろしくないと、明治期には恋歌をばっさり削除した異種百人一首も!?

『百人一首 編纂がひらく小宇宙』/田渕句美子遮炎岩波新書/968円
 定説とは“今のところ”の意。学問は常に発展途上で、藤原定家が撰者とされる百人一首は後人による改編であるというのが著者の最新研究報告だ。では誰が?と名指しを急ぐのは拙速で、本書の魅力はアンソロジーの奥義を説く所。百人一首は歌のお手本集であり、時が移ろう四季の歌であり、生活誌や文化史でもあると。読みやすいが細部には教養がみっしり。再読を重ねたい。

TVドラマ『VIVANT』で知名度の上がった公安警察。その闇に挑む

TVドラマ『VIVANT』で知名度の上がった公安警察。その闇に挑む

『月下のサクラ』/柚月裕子/徳間文庫/902円
 前作で親友を殺された森口泉。県警一般職員の彼女は無念の内に県警を辞し、なんと警察官採用試験に挑む。30歳の新人警官誕生。シリーズ第2弾の本書は前作同様、現実の事件との類似を想起させ、会計課の金庫から1億円が消えた内部事件をIT技術で追いかける。上司の黒瀬がかなりいい男。ちなみにサクラとは公安警察を指す隠語。“泉挫けるな”との思いで一気に読了する。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年3月21日号

関連記事

トピックス

日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【悲劇の発端】瑠奈被告(30)は「女だと思ってたらおじさんだった」と怒り…母は被害者と会わないよう「組長の娘」という架空シナリオ作成 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
松岡茉優と有岡大貴
【8年交際の全貌】Hey!Say!JUMP有岡大貴と松岡茉優が結婚「この春、引っ越した超こだわりの新居」
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子
《愛人との半同棲先で修羅場》それでも三田寛子が中村芝翫から離れない理由「夫婦をつなぎとめる一通の手紙」
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告
【父親とSMプレイの練習していた】瑠奈被告(30)の「女王様になりたい」に従った従順な両親の罪
NEWSポストセブン
渡部建
「夫婦生活に大切なものが3つあります」アンジャッシュ渡部建、新ビジネス「結婚式VTR」でのスピーチ内容が反響呼びオファー殺到
NEWSポストセブン
藤井聡太八冠、満員電車で予期せぬハプニング 隣に座った女性が頭をカックンカックン…冷静な対応で見せた“強メンタル”
藤井聡太八冠、満員電車で予期せぬハプニング 隣に座った女性が頭をカックンカックン…冷静な対応で見せた“強メンタル”
女性セブン
佳子さま
【不適切なクレームが増加?】佳子さまがギリシャ訪問中に着用のプチプライス“ロイヤルブルーのニット”が完売 それでもブランドが喜べない理由
女性セブン
杏が日本で入院していた
杏が日本で極秘入院、ワンオペ育児と仕事で限界に ひっきりなしに仕事のオファーも数日間の休みを決断か
女性セブン
田村瑠奈被告
【戦慄の寝室】瑠奈被告(30)は「目玉入りのガラス瓶、見て!」と母の寝床近くに置き…「頭部からくり抜かれた眼球」浩子被告は耐えられず ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン
中村芝翫と三田寛子(インスタグラムより)
《三田寛子が中村芝翫の愛人との“半同棲先”に突入》「もっとしっかりしなさいよ!」修羅場に響いた妻の怒声、4度目不倫に“仏の顔も3度まで”
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
【独占スクープ】中村七之助が京都のナンバーワン芸妓と熱愛、家族公認の仲 本人は「芸達者ですし、真面目なかた」と認める
女性セブン
日本中を震撼させた事件の初公判が行われた
【絶望の浴室】瑠奈被告(30)が「おじさんの頭持って帰ってきた」…頭部を見た母は「この世の地獄がここにある」 ススキノ事件初公判
NEWSポストセブン