弟子の暴力問題で厳しい処分を受けている元横綱・白鵬の宮城野親方。親方としてのキャリアは崖っぷちの状況だが、現役時代の優勝回数は歴代最多の45回を数え、引退後の解説などでも人気を博してきた一面もある。それゆえ、相撲協会内でも対応に苦慮する現実があるようだ。そうした実態を象徴する一場面を、本場所会場でキャッチした。
春場所が開催されているエディオンアリーナ大阪では、力士や親方衆など協会関係者は南ピロティと呼ばれる駐車場入口がある裏門から出入りすることになっている。
幕内の取組が始まる頃になると、道路を挟んだ歩道側にファンが集まり始める。取組を終えた関取が迎えの車に乗り込むために出てくると、ファンが四股名を呼び、力士が手を挙げて応える。
打ち出し後、三役以上の力士や親方などが裏門から一気に出てくるが、親方に対しても現役中の四股名でファンが呼びかけることがある。まだ髷がついた引退間もない千代の国(佐ノ山親方)や石浦(間垣親方)を呼ぶ声が聞こえた。それらは、いつもの春場所の光景だが、「今年は様子が少し違う」と話すのは毎年来ているという相撲ファンのひとりだ。
「白鵬(宮城野親方)が出てきたら、ファンが警備員を振り切って駆け寄り、サインをもろたり写真を撮ったりしとる。なんでかって? そりゃ、来年の春場所にはおらんかもしれんからな。貴乃花も春(場所)でモメて、次(の年の春場所)はおらんかった。みんなそう思っとるんちゃうか。警備員も目をつぶっとるわ」
宮城野親方は記者クラブ担当を務めているが、打ち出し後は土俵周りに出てきて、他の警備担当の若手親方衆と一緒にお客さんが帰るのを見届ける仕事をしている。見届けた後は警備本部副部長の九重親方(元大関・千代大海)に一礼してから会場を後にする。
11時頃に会場にやってきて、18時20分頃に帰るスケジュールだ。6日目の3月15日も、ほぼ最終バッターとして裏門から宮城野親方が出てくると、ファンが8人ほど駆け寄ってサインや記念写真を求めていた。
宮城野親方は断わることなくサインを書き、ファンとツーショット写真撮影に応じていた。その後に迎えの車に乗り込んで帰路に就いた。一緒に出てきた音羽山親方(元横綱・鶴竜)は近くのコインパーキングに停めた車まで歩いて向かったが、ファンに取り囲まれることはなかった。事情はどうあれ、宮城野親方人気は高い。