ドラマ『ムショぼけ』で主演を務めた北村有起哉
沖田:パート2は、ドラマ版の続編になる内容で書きました。ドラマの最初のころから「『ムショぼけ』が目指すのは、北村さん主演で映画を撮ること」って自分も考えていました。原作小説は、続編となる『ムショぼけ2』(サイゾー出版刊)まで進んでいますから、映画のお声をかけてもらえるだけの作品にはなっていると思っています。
そしてこの3月18日、秋田書店からコミックの『ムショぼけ』が出ることになりました。漫画を描いてくださった漫画家の信長アキラさんの奥さんが、「あなたの好きそうなドラマやってるよ」と信長さんに勧めたのがきっかけだそうです。ドラマを見て泣いた信長さんが、編集担当に「この原作者と仕事がしたい」って相談したことで、僕のところに連絡が来て、漫画用にストーリーを書き下ろすことになったんです。
北村:漫画化になったと聞いて、本当にうれしいですし、びっくりです。よっぽどの衝撃でハマってくれたんでしょうね。漫画、楽しみです。絶対、僕なんかよりかっこいい(主人公)でしょう(笑)。
沖田:『ムショぼけ』というタイトルですが、物語は完全書き下ろしです。北村さんの演じられた陣内宗介の新しい物語が、小説や漫画で続いている。まだまだ、これぐらいでは『ムショぼけ』は終わられへん、と思っています。
──小説やドラマの『ムショぼけ』では、SNSでの誹謗中傷が、ヒロインの人気インフルエンサー・リサの悲劇を生む過程が描かれました。現実の令和の世でも、「SNSでの誹謗中傷」は社会問題の1つになっています。「ムショぼけ」で社会の変化に戸惑った陣内なら、この現実社会をどう感じると思いますか?
沖田:SNSの書き込みを見た陣内は、憤ったり、ムキになったりした。ただ、それは自分が親しいリサが被害に遭っていたから、怒ったんです。陣内だけでなく、多くの人は、自分や身の回りに実害が及ぶものでない限り、気にも留めていないのが現実ではないでしょうか。
北村:もちろん、いろんなことは感じています。ただ、僕自身はSNSをほとんど見ないんです。インスタグラムとブログはやっていますが、(コメントは書き込めない設定で)それも一方通行。僕にはコメントなどを気にしている時間がいまのところない、というところです。
きっと僕も時間があって見てしまっていたら、翻弄されちゃうんでしょうね。そういう匿名の言葉が凶器になりえることも知っているので、怖い社会だなと思いますし、いつまで続くのか、不安でもあります。かつて寺山修司が『書を捨てよ町へ出よう』という評論集を出しました。「SNSを捨てよ町へ出よう」と謳う人物が、また出てくるのかな。
でも、SNSで自分を表現することが、生きがいだったり、自分の居場所と思う人はいるんだろうと思います。それも人それぞれの向き合い方かなと思います。