香川のロケでは、毎晩のように趣里さんからご飯をご馳走になりました。出生の秘密を知ったスズ子が六郎に抱きしめられて大泣きするシーンでは、僕が絶対にしてはいけないのにミスをしてしまったんです。“うわぁ、どうしよう”と思って、その夜ご飯に連れて行ってくれた趣里さんに、「ごめんなさい」と改めて謝ったら、「全然気にせんで食べぇ」と言ってくれました。優しい人だなあと思いましたし、反省して次は頑張ろうと気持ちを切り替えることができました。
僕は趣里さんの“怒る演技”が好きで、「何やってんねんコラァ!」というキレ方もあれば、静かに肩を震わせるなど怒り方の種類がいくつもあるんです。
付き人・小夜ちゃんとお父ちゃん(梅吉)が酔っ払って六郎の好きな亀を勝手に触るシーンで、スズ子が「何をしてんねや」と沸々とした怒りを滲ませたところが特に好きで、現場で見ていて震えました。“六郎のことを思って怒ってくれているんだ”と考えると、僕も泣けてきましたね。
【プロフィール】
黒崎煌代(くろさき・こうだい)/2002年生まれ、兵庫県出身。2022年、「レプロエンタテインメント30周年企画『主役オーディション』」に合格。NHK連続テレビ小説『ブギウギ』でデビュー。映画『さよなら ほやマン』が公開中。
※週刊ポスト2024年4月5日号